【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！

●詠坂陣営：秋色喫茶　その２

　しばらくして工藤歩夢と烏丸エリオの小学生二人連れが通りかかった。
「あ、このお菓子かわいー！」
　歩夢がエリオの袖を引く。もうさんざん買いものをしたのだが、ここにも寄ってみようということになり、二人は興味津々に秋色喫茶を覗き込む。
「ごめんやすー。わーおいしそうな物いっぱいで目移りしてまうわー」
「りんごだぁ、お土産にしようかな！　でも、プリンも食べたい……」
　歩夢が悩みに悩んでいると、エリオがプリンを覗きこんだ。
「猫鳴館……？　ねこなきやかたって書いてなんて読むんやろ？」
「びょーめいかんだよー」と荒太郎が言った。「ぼくは猫館って呼んでるけどねー。プリンは裏庭で育てた南瓜と飼ってる鶏の卵で作ったんだよ。レシピは家庭科の先生に教えて貰ったんだー」
「僕これ気になるからこれにするわー」
　エリオが即決する傍で、歩夢はお財布とにらめっこ。
「うっ……リンゴかプリンかどっちかしか買えない……悩むよぅ」
　するとエリオは歩夢にこんな提案をした。
「んーじゃあ僕のプリン半分こする？」
「え、いいの？」
「僕はかまへんでー」
「わーい！　エリちゃん、大好きー！」
　歩夢はエリオをぎゅーっと抱きしめる。エリオはゆるりとはにかみながらぎゅーっのお返しをした。
「うー僕も歩夢好きやで。代わりに今度なにかおごってやー」
「うん！　お礼は絶対するからね！」

　少年たちの可愛らしいハグを微笑ましく思いながら、荒太郎はエリオにプリンを、歩夢にリンゴのギフトセットを渡してあげる。少年たちはそれを持ってテーブルについた。エリオがプリンの蓋を開けると、歩夢がスプーンで一口掬ってにっこり。
「はい、エリちゃん、あーん」
　エリオはそれをぱくりと食べる。
「甘くておいしい……。これ最後に食べれてよかったわー」
　エリオの微笑みに満足した歩夢は、鞄から顔を出していたインコのラピスにも一口。
「ラピスも食べる？　はい、あーん」
「歩夢のインコ今日も元気やねー。多聞坊もプリン食べはるかな？」
　エリオも友だちのカラスにプリンを分けてあげる。
「多聞坊かっこいいなぁ……」と歩夢が感心していると、ラピスがポケットの中に隠れてしまった。
「……あ、そっか。『てんてき』なんだっけ」
　ぼくがいるから大丈夫だよ～、と声を掛けるが、ラピスは怖がって歩夢のポケットの中から顔を出しては隠れ、顔を出しては隠れする。歩夢もエリオもラピスがあまりにびびりなので思わず笑ってしまった。

「あっそうや」
　プリンを食べ終え、エリオは鞄をごそごそと漁る。
「お姉さんお兄さん、これ実家のお寺さんで作ってはるお守りなんやけど当選祈願ってことで受け取ってや」
　お守りは、紫蓮とエヴァと、荒太郎と小淋の四人分。
「ありがとう！」と紫蓮。
「嬉しいわね」とエヴァ。
「大事にするよ」と荒太郎が言えば、『私の分もですか？』と小淋はちょっと驚いたものの、やっぱりありがたくお守りをいただく。

「がんばってなー」
　エリオと歩夢は手を振って秋色喫茶を後にした。
　寝子小のみんなと合流したら聞いてみよう。
　何を買ったの？　とか、何が面白かった？　とか。
　きっとみんな、お土産もお土産話も沢山出来たに違いない。