【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！

●志波陣営：シーウェーブ　その７

　小学生の体力ってすごい。
　鴻上彰尋はぜえぜえと肩で息をする。小学校低学年の弟と妹を連れてバザーに来て、体育祭でお世話になった志波さんにお礼も兼ねて、と幸せの葡萄に挑戦中なのだが、如何せん、小学生の体力を甘く見ていた。
　張り切って縦横無尽に駆けまわる弟妹に向かって
「あまり走りまわるな」
　と窘めてみるものの焼け石に水。
　はぐれても困ると彰尋まで走る羽目になっている。

「幸せのブドウ、どこだろーね、ゆきくん？」
「わかんねー。いねーし！」
　お団子頭の椎名あさひと青い瞳の双葉由貴が武道を探してきょろきょろしている。
　
「君たちも幸せの葡萄に挑戦してるのか？」
　走るのに疲れた彰尋は、四人兄弟の次男坊な面倒見のよさから、あさひと由貴に声を掛けた。
「うん！」
「ブドウ、見たか？」
　由貴に尋ねられたが彰尋は首を振った。
　彰尋は落ち着いてあたりを見渡してみる。この人ごみの中だと子どもの視界は限られたものだろう。高校生の自分はこの子たちより背が高い。その分、この子たちより遠くまで見えるかもしれない。
「あ」
　紫色の看板を背負った男がふたつ向こうの店の脇を悠々と通り過ぎる。
「あそこだ」
　彰尋はあさひと由貴、それから弟と妹に指差して教え、自分も走り出す。

「行くぞあさひ！」
「うん！」
　答えてあさひは由貴の袖をきゅっと掴んだ。由貴は虚を突かれどきりとしたが、人が多いし迷子になったら困るもんな！　と納得する。
「はぐれないようにしっかりついて来るんだぞ」
「うん。ほらほら、ゆきくん行ってみよー！」
　あさひが駆け出した。
「って、あさひ早い！」
　意外と運動神経がいいな、と内心舌を巻きながら、置いてかれないよう男の意地で由貴も走る。
「まてー！　ぶどーう！」

◇

　ぶどーう、と聞こえ、武道はにやっと笑った。小学生たちがかなり本気の走りで追いかけてくる。こっちも適度に本気で、けれど彼らが追い付ける速さで逃げる。
「つーかまえたっ！」
　一番最初に武道にタッチしたのは男子の面目を守った由貴だった。
　続いてあさひ、それから彰尋の弟と妹たち。最後に彰尋も武道を発見。
「あー、つかまっちゃったナー☆」
　武道はひとりひとつずつ、看板についていた巾着を渡した。あさひが感嘆の声をあげる。
「うわー、きれいな石が入ってる！」
「天然石か」彰尋が弟たちの石を見てやりながら言った。「俺のは青いターコイズだ」
「おぉ。その石は、困難を乗り越えて夢をかなえる力があるらしいぜぃ」と武道。
「あさひのは？　このピンクの石！」
「それはローズクォーツ。恋愛成就に効果があるらしいよ」
「俺のこの青いのは？」
「ブルーオパールだね。幸運の石だからラッキーだぜぃ！」
「やった！」
　幸運、と言われて由貴はガッツポーズをする。あさひも嬉しそうに巾着を鞄に仕舞った。そして代わりに取り出したものを武道に渡した。
「ブドーおにいちゃん、ありがとう。これ、前に撮ったカワウソの写真。わたそうと思ってもってきたんだ！」
「おおおー！　癒される！　ありがとうな！」
「これ、俺からも。色々と動き回ってそうですから、水分を補給した方が良いですよ」
　彰尋が飲み物を差し入れると武道はそれも有難くいただいた。

「がんばってねー！」
　あさひと由貴は手を振って武道と別れる。彰尋も弟と妹を連れ、会釈して去って行った。この後もバザーを見て回るのだろう。
　あさひが言った。
「たのしかったね！」
「ああ。お小遣い少なかったけど、それでも楽しめたな！」
　由貴も景品の巾着を手に、嬉しそうにそう答えた。