夢の晩餐｜リアクション

夢の晩餐

（なっとうとか、おいしいのに……）
　海美は首を傾げる。
（なんでみんな、いやそうなかおをしてるの？）
　そんなに変なものなんだろうか……そう思いながら、海美は蓋を開く。

（うわー！）
　海美はびっくり仰天。
　目の前に現れたのは、レバ刺しの塊。
（なんだこの赤くてぶよぶよしたやつ！）

　現在日本では販売されていないレバ刺し。
　初めてみるそれは、グロテスクな血の凝結みたいに見えた。
（こんなの、やかずにたべるなんて気もちわるい！　）

　だれかとこうかんしようと思ったが、先ほどの時尾の言葉を思い出す。
　交換はだめらしい。じぶんでたべるしかない。

「べんてんさま、これなんですか？」
「レバ刺しだ。残さず食べるがよい」
　レバ刺し。海美はその名前に記憶があった。

（ばいきんがいっぱいいるから、たべちゃだめなんでしょ？）

　ボツリヌス。サルモネラ。アニサキス。
　昔教わった怖い食中毒を引き起こすバイキンや寄生虫を、彼女は思い出した。

（しかもしんじゃうやつ……）

　そのとき、ひときわ強そうでカッコイイお姉さんが、ため息を漏らすのを彼女は聞いた。

「また、生死の境をさまようのか……」

　これを聞いて、海美は真っ青になった。

（このしょくじをたべたら、しんじゃうんだ！）