夢の晩餐｜リアクション

夢の晩餐

　英語の時間中に居眠りをし、夢の晩餐へと召還されたのは、篠原翠響。

　ふかふかの絨毯に、マホガニーの箪笥。シャンデリアには澄んだ炎が揺らめく。
　奥の座で琵琶を爪弾くのは、性別は変だけど紛れもなく弁天だ。
　いつの間にか自分も余所行きのフォーマルなおしゃれをしている。
　すらりとした彼女に、シックな服装はよく似合っていた。
　そして目の前には、半球状の銀の蓋だ。

（ラッキー！　これってもしかしらご馳走？）

　よく事情はわからないが、これを食べてもいいらしい。
　フードカバーをうきうき取り上げた彼女は、さっと顔色を変えた。　

　グリーンピースと牡蠣の香草炒め。
　ラー油とナンプラーをふんだんに使った、四川風のエスニックな炒め物だ。
　スッキリしたスパイシーさが口に残るアイデア料理。

　見る見る翠響の顔がゆがんでいく。

　ぶよぶよ得体の知れない牡蠣の身に、油でテラテラ光るグリーンピース。
　生々しい色彩が、彼女の記憶を刺激した。

　グリーンピース。牡蠣。セロリ。
　彼女の嫌いなもの三点セット。
　割合器用で、そつなく何事もこなせる彼女。苦手はあまりないのだが、これらだけはノーサンキューだった。

　臭いのえぐさが許せないグリーンピース。
　同じく、嫌悪を催させる刺激臭のセロリ。
　極めつけは牡蠣。生臭さ、食べた時の感触。どれも受け付けない。

「こんなの、食べられないよ……」
　見た目だけで、気分が消沈していく。加えて、どの食材にも苦い思い出があった。

「出されたものは、すべて食べるがよい……」
　弁天のその声が、悪夢のように響いた。

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