夢の晩餐｜リアクション

夢の晩餐

　その傍らで、ついに奮起する刀、円、天野。
「カレー！　カレーを所望する！」叫んで立ち上がる円。「カレーに入れたら、不味いものなんてあるわけがない！」
　ほいとカレーを手渡す刀。もちろん刀の分は別口で現れるが、彼はそこに円のピーマンを放り込む。
「少し分けてくれ」カレーで痺れた舌を、水とピーマンで癒す。
　賦活させ、味覚を再生させる。
　そこまではいかなくても、別のを食べれば気が紛れる。
「ピーマン、プリーズ！」慎之介が円に言う。
　手早く時尾が衣をつけ、油に投入する。黄金色の納豆ピーマン天ぷらの完成だ。
　これならいける。香ばしさが納豆の臭みを中和し、食欲を取り戻させる。
「このまま一気に食いきってやる！」カレーを口に入れ、悶絶する。「辛いよ！」

「納豆、入れてみませんか？」時尾が言う。
　納豆のとろみはカレーの辛さをまろやかにする。
　カツ、チーズ、オクラ、秋野菜。
　いろいろなトッピングをしつつのカレー大会が始まった。
「カレーおいしい！」そう言いつつピーマンを器用にのけようとする円に、弁天のするどい視線。
「……わ、解ったよう……」カレーをしっかりまぶし、無理やり鼻をつまんで嚥下した。

　カレー強し！　円を最後に助けるのは、彼女の知略、そして仲間。
　おこちゃま舌の克服はならなかったが、ともあれ食べきることができた。
　

　それなりに食べ終わるものが出始めた。
　ここからは、細工の効かない相手が敵だ。

　ジュウジュウ煙を上げる２種類のケーキを見つめる天野。
　さすがにケーキとカレーは合わない。
　とある落語家は、必ずカレーにチーズケーキを入れていたという。
「バターと小麦粉だ。不味いわけはない」ということだった。
　実際食べたものは、そのうまさに驚いたらしい。
　しかし、さすがにここで試すわけにはいかない。

「早く食べるがよい」なんだか弁天は、天野を集中攻撃しているようだ。
　ため息をつき、自分の胃の腑に投下するといった風情で、ケーキを口に入れる。

「食いました」魂の抜けきった顔で呟く天野。少しでも動けば、吐き気がこみ上げてきそうだった。