幕の内の内の内｜リアクション

幕の内の内の内

　ポリシーという点では、真央も引けをとらない。
　彼女の方針は決まっていた。

『手を汚さず箸も使わず、片手で食べられるものが欲しいのだ！』

　演劇祭で販売されるもの、という点で彼女は考えた。
（幕間には、トイレに行きたいし買い物もしたい……。
　でも急いで箸を落としたら、涙目になってケチがつく……）
　コストも人件費もかけられない。
　お客さんのため、ちょっと名物にもこだわりたい。

　彼女の出した最適解は――。

「食キング（しょっきんぐ・自称）の血が騒ぐのだ～！」
　勇んで取り出すは、惣菜カツに出来合いのソース缶。
　時短、マンパワー削減のために、彼女は躊躇なく市販品流用を選んだ。
　寿司酢、稲荷用の油揚げも市販品。
　
（斬新だな……）衛守は舌を巻く。
　こだわりはあえて捨て、大胆に出来合いのものを利用する。
　ＴＰＯにあったチョイスこそが最も重要。
　傍目にはショッキングな、それでも見事に筋の通った、まさに『食の王』にふさわしき果断であった。

　耳なし食パンの上に、惣菜カツが配置され、それぞれ味付けの異なるソースがまぶされる。
　牛ヒレカツには芳醇なデミグラスソース。衣はしっとり。
　豚カツには定番、トンカツソースにマスタード、歯ごたえ重視の太目に切った千切りキャベツ。
　チキンカツには薄焼き卵とトマトケチャップ。
　
　ランチボックス入りのサンプルは、各サンド二つずつ。付け合せはピクルスの代わりにつぼ漬けと大根漬け。
「とってもボリューミーなのだ！」
　それでいてコストは十分抑えられ、手軽さ抜群である。

　その傍らには、満月作の小ぶりなおにぎり風サンドイッチ２種。
　すぐ食べられるように、サイズはちょっと小さめだ。