【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～｜リアクション

【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～

　コーヒーを飲みながらウォルターはゆっくり目を細める。
「こんな風にされたのは初めてだねぇ。ま、こんな姿を晒した事自体初めてなんだけれどもね。自分が情けないよ」
「そう言うんだったら、あの子達の為にもいつもの先生に戻ってください。データを無くした位で落ち込むなんて、先生らしくないと私も思います」
　牡丹の言葉に、ウォルターの眼が楽しそうに光る。担任である彼の肩を叩いていた早坂恩もまた、穏やかな声で問いかける。
「テストのデータがないなら、また作り直しても良いんじゃないかしら？　いつもの先生なら、こういうのは逆にやりがいがあるって状況に思えるんじゃない？」
「そうそう。むしろ、もっと凶悪な問題を作ってこそ、ウォルター・ブラックウッドでは？」
　相槌をうつ牡丹の言葉が重なると、ウォルターの表情に、漸く普段どうりの不敵さが戻ってきたように見えた。そして、彼は真央の言葉を思い出す。

　――もし本当にデータがどこにもなかったとしても。ここにはちゃんと残ってるのだ。センセがもう１度取り出そうと思えばすぐ取り出せる。真央ちゃんはそう思うのだ！――

　触れられた頭と胸に暖かな何かを覚えたウォルターは、静かに微笑む。
「とりあえず、データを探してくれている生徒もいる事だし、僕は僕で新たな問題でも考えておこうかな」
　そう言うと牡丹が資料とノートを渡してくれた。彼は礼を述べてアイデアを纏め始める。恩はそっと離れ、パーティションを用意する。すると、扉が空いた音がした。職員室から戻ったねむると修である。
「こっちのデータ修復はあらかた出来たかなー。サルベージできた分もあったし、少しでもお役に立てたらいいけど」
　ねむるがそういった傍から修のスマートフォンがなる。相手は美咲紀だ。USB発見の連絡に、修の表情も柔らかくなる。それを聞いたウォルターはよかった、と安心したように肯いた。
　同時に、僅かにだがウォルターの顔色が良くなり、彼の傍で小さな光の粒がはじけるのが見えた。

【ウォルター・ブラックウッドは、やる気を取り戻した！】

　因みに。体調が戻ったウォルターは放課後、射撃部の部室へとやってきて一言。
「……これは、やりすぎかもね？」
　そういう割には楽しげに笑っていて、真央、修、美咲紀共々暫く笑ってしまう。そして、コーヒーを飲みながら作業しつつも時折部員たちに射撃のレクチャーをしてくれるのであった。
　そして、修がエア銃部門参加に必要な技能（空気銃・立射）の段位を取った事を報告し、手続きを頼めば笑顔で肯いた。
　また、ねむるが射撃部の部室を訪れる。不思議に思ったウォルターに、ねむるはとあるお願い事をした。それは……英会話を教えて欲しい、という事だった。
「ふぅん？　どんな理由か聞いてもいいかな？」
　興味を持ったのだろう。ウォルターが眉を上げて問いかければ、ねむるは真面目な顔で口を開く。
「……異国の地の友人に、自分の声で気持ちを届けたいんだ。そして彼自身の言葉も、僕の耳で聞き取れるようになりたい。だから、先生……僕に英語を教えてください」
　お願いします、と頭を下げたねむるに、ウォルターは何かを感じ取る。そして、静かに肯きながらこう言った。
「実は、他の英語担当の先生と希望者を募って英会話補習をやってみようかと考えていたんだ。少し考えさせてもらえるかな？」
　その言葉に、ねむるは嬉しそうに１つ肯いた。