【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～｜リアクション

【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～

　胸の中にざわり、としたものを覚える巴。実は、この２人にはちょっとした『しこり』がある。中学時代、不貞腐れていた巴は何かと気にかけてくれた羽衣を邪険にしてしまった、という負い目がある。巴の視線に気付いた羽衣も、少しだけ胸に痛みを覚える。
（最近、あんまり話してなかったけど……、また仲良くしたいな）
　僅かな寂しさを押さえ込み、平静を装って笑いかける。けれどもその不器用な笑顔に、巴の胸が僅かに軋んだ。それでも、彼女は不敵な笑みを浮かべる。
（あんたがその事に触れないなら）
　ここで持ち出すのは野暮というものだろう。巴はいつもの様に笑い、大志たちに歩み寄った。
　巴が問題を作った、と持って来た物は、架空の大陸を使ったものだった。それを見た時、輝一と大天使天吏、夏朝の表情が少し険しくなる。巴が問題を作る、と言ったと同時にやる気がなくなった様子を３人は見ているのだ。しかし、問題を手にした大志の様子は、特に変わっていなかった。
「これはこれで面白いですねぇ。架空の大陸を使う、というのは考えませんでした」
「わぁ！　これは新大陸？　さすが巴ちゃんだねっ！　テストっぽい問題を押さえてる！！」
　目を輝かせる羽衣の傍らで、夏朝や輝一も興味深そうに見つめる。ところが、羽衣は何かに気付いた。
「でもこの問題には文明が足りない気がするよ？」
「文明について、かい？」
　思わず聞き返す巴に、２年生である天吏と葉月も問題を見た上で「なるほど」という顔をした。巴がさぁ、どうしようかと思案していると、羽衣が指を鳴らす。
「うん、決めた！　あたしも何か考える！」
「「え？！」」
　思わず聞き返す者数名。大志は巴の問題を見て「これはこれで面白そうですね」と感心している。先程のようにやる気が落ちたりはしていないようだが、気がかりだった夏朝は一応警戒した。
　空いている机を借りてさっさかと問題を考えていく羽衣。その様子を黙って見守る一同。しばらくして羽衣によって問題が付け加えられた。

問４
それぞれの地点ではどのような民族が栄えると考えられるか。彼らの主要産業が何かも合わせて簡潔に説明せよ。

問５
温泉が湧くと考えられる地点を示せ。

問６
都市間を結ぶ交通網はどのルートを通るのが最適か。　

　嬉々として作る羽衣とせっかく明るい目になったのに再びダウナー気味になってきた大志を見、流石に止めないとまずいと感じた輝一が「ここらへんで……」と止める。そして完成した問題を見せた。
「……やけに枝葉だし地学も混ざってやがるね」
「地学は旭先生の分野ですね」
　問題を見た巴と大志がそれぞれぽつり、という具合に呟く。夏朝達もその問題をみて思わず首をかしげる。
「作ってくれた桜崎さんと鴇波さんには申し訳ありませんがこれはさすがにテスト問題には向きませんね」
　苦笑する大志は、次の瞬間にはどこかしゃきっ、とした眼差しで笑いかけた。
「ですが、テストを心配して考えてくれた事には感謝します」
　ありがとうございます、と一礼する大志に、巴は「ふん」とそっぽを向き、羽衣はにっこりと笑った。

　そんなこんながあったが、大志はうきうきとした様子で資料を見る。生徒たちと旅行関連の話が出来てよかったらしい。
「なんだか、冬の旅行が楽しみになってきましたね」
「でも、テストが終わらないと遊びに行くこと出来ないですよね、先生？」
「旅行に行く前に、綺麗さっぱり懸案事項を片付けましょう。その方が旅も楽しいですよ」
　輝一と葉月がそれとなく問いかければ大志は１つ肯く。その顔は、とてもすっきりとしていた。
「言い訳になってしまいますが、最近はなかなかゆっくりと、旅行の話ができていなくて……。フラストレーションが高まっていたのかもしれませんね」
　そう笑いかける大志の傍で、光の粒が弾けて消えた。それが見えたメンバーはなんとなくほっ、とした。もう、大志は大丈夫だろう。

【伊東大志は、やる気を取り戻した！】