【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～｜リアクション

【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～

＊ウォルター先生の場合（その１）：ウォルター先生、大丈夫？

（……体調が悪いのかもしれない。だとしたら……）
　テオの声を聞いた八神修はなにやら考えながら保健室へ向かっていた。その途中で出くわしたのは眠たそうな日暮ねむるである。
「？　日暮も保健室に行くのか？」
「うん。もしかしたらウォルター先生がいるかもって思ってさ」
　ねむるが欠伸をかみ殺しながらそう言えば、修は「考える事は同じかもな」と納得した。２人は共に保健室へ向かう事にした。

「……ウォルター先生？」
　その保健室では、保健委員の仕事をするために来た添木牡丹が首をかしげていた。眠っているのだろうか、ウォルター・ブラックウッドは彼女の声に気付かない。
（保健委員として来たら担任が保健室で寝ている。これってどういう事なんですか？……ウォルター先生、保健室は仮眠室じゃないんですけど）
　ぶっちゃけ邪魔です、と思わず内心で言おうとした牡丹だったが、ここで少し違和感を覚える。ウォルターの顔色があまりよくないように見えたのだ。
（これって、本当に調子が悪い……？）
　咄嗟に額へと手を当てると、熱が少しあるように思えた。もしかしたら、神魂でやる気を失う以前に体調もくずしていた、のかもしれない。
「念の為に体温計を……」
　と、取りに行こうとした時、保健室の扉が開いた。
「はう、怪我しちゃったのだ。軍手なしは意外と危険だったのだ」
「真央ちゃん、大丈夫？」
　猫のような笑顔の少女、後木真央とたおやかな雰囲気の少年、早坂恩だった。真央は射撃部の練習場近くの草むしり中に手を切り、「ぬかったのだ」とちょっとしょげている。そんな彼女が途中で出くわした恩は、元々身体が弱い。テストの前にはあまり無理しないように、と保健の先生と相談する為ここに来たのだ。
「早坂さん、先生はまだ来ていませんよ。それと、後木さんはちょっと手を見せてくださいね。直ぐに消毒しますから」
　牡丹が柔らかい表情でそういうと、２人は肯く。しかし、辺りを見渡した恩がウォルターに気付き「まぁ……」と声を上げる。
「なんだか珍しいところを見た気がするわね……。先生ったら、どうしちゃったのかしら？」
「具合がわるいのだ？　ウォルちゃん先生、大丈夫なのだ？」
　手当てをしてもらった真央は、牡丹に礼を述べてからウォルターに近寄る。そっと額に手を乗せれば、ほんのちょっと熱い気がした。
「体温は……３７度ですか。微妙なラインですね。ちょっとお疲れ気味だったのかもしれません」
　牡丹はふぅ、と溜息を吐いた。高熱では無いが、ただ怠けているというのともちょっと違う気がする。恩と真央が心配そうに見守る中、再び扉が空く。ねむると修、彼らと合流した椿美咲紀がそっと入室すると、その音で気付いたのか、ウォルターが僅かに声を漏らして目を覚ました。牡丹はふぅ、と小さく溜息を吐いて、事情を説明してもらう事にした。

「ん？　添木に早坂じゃないか。君たちはここにいて自然だとして……後木と椿、八神と日暮はどうしたんだい？」
　普段よりちょっと元気の無いウォルターは集まった生徒たちの顔を見て問いかける。
「それよりも、先生は何故ここに？」
「……テスト問題を作らなくちゃいけないのはわかってるんだけど、どうもやる気が出なくなってしまったんだよ」
　美咲紀の問いかけに、ウォルターはいつもの調子で答える。それに恩は少し驚いたようだ。『ひと』である彼はテオの声を聞いていないので、事情を知らないのだ。
「ちょっと先生、そんな事でどうすんのよぉ……」
　そんな姿を見せられると、調子が狂う、と恩が言えば、ウォルターは少しだけ苦笑を浮かべる。だけど目は真面目で、内心の焦りが浮かんで見えた。