【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～｜リアクション

【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～

「何故かは解らないけど、テスト問題のデータが無くなってねぇ。それが解った途端に、ふぅ、とやる気が出なくなってしまったみたいだよ。ここの所忙しくてあまり眠れなかった、というのもあるけど……」
　牡丹は内心呆れた、と思いつつも疲労と寝不足という点では心配になる。その傍らで、問題が無くなった、という情報にねむると修が何かを思いついた。しかし、それより先に真央が声をかけた。
「ウォルちゃんセンセ、ファイル検索はチェックしたのだ？　あとUSBを持って動いた場所の心当たりとかあるのだ？」
「ファイル検索は、したけれど見当たらなかったよ。あとUSBの心当たりがあるとすれば、職員室と……射撃部か華道部の部室かな。色は白だよ」
「よっし！　どっちも当たってみましょう！」
　美咲紀の言葉に真央は肯き、早速ウォルターから部室の鍵を借りる。そして保健室を出る前、真央はにぱっ、と笑った。
「調子が戻ったら、射撃場へ行って射撃してその後部室でコーヒーを飲みましょうなのだ。みんなもどうぞ！　初心者歓迎なのだっ♪」
　そして、胸に手を当ててにっこり笑い、何か２、３伝えると先に出た美咲紀の後を追って保健室を後にした。
　その背中を見送ったねむると修は「「あの」」と一緒に声をかけてしまい、とりあえずねむるから話しかける事に。
「先生は寝ててもいいよ。お疲れみたいだしさ。ただ、その代わりPC内のフォルダをローラー作戦でチェックするからIDとパスワードだけ教えてもらってもいいかな？」
「場合によっては消去したデータの復元も、やろうと思えばできると思う」
　ねむると修の申し出に、ウォルターはしばし考えたものの、それも疲れてしまったのか、好きにすればいいと言って情報を紙に書いて渡した。正し全てが終わったら破棄する事を付け加えて。
「USBと両方用意していたみたいだし、放送でも呼びかけてみるか」
「あとはパソコンの中身を調べてみるだけだねー」
　２人もまた保健室を後にする。恩と牡丹、ウォルターだけが残り、妙に静かになる保健室。そこで牡丹はふぅ、ともう一度溜息を吐いた。
「テスト問題が紛失したのは確かにお気の毒ですし、先生とて人間ですから落ち込む事も理解できます。でも、ふて寝している子供みたいですね」
　これで寝不足と疲労、軽度の発熱が無ければ「邪魔だから本当に必要な人の為にどいてくれ」と言っただろう。彼女はそういった点では差別主義的と言えた。
　恩もウォルターを心配しつつ、たおやかな表情で言葉を続ける。
「いつもは私達が壁にぶつかって悩んだりするのをかなり手厳しく言っちゃってくれるわよね。そのシビアな評価で私達に発破かけて欲しいわ。今の先生は、とってもらしくないもの」
　そんな言葉に、ウォルターは何か『はっ』とした表情になる。それで何かを感じ取った２人は、自分たちの表情がより優しくなるのを感じた。
「私、ただやる気失くしているだけの人には優しく出来ないですけど、サービス位はしてあげますよ。コーヒー、飲みますか？」
「ふふ、疲れてるみたいだし、肩たたきくらいならしてあげられるわよ！」
　牡丹が問いかけ、恩が背中を叩く。自分が担任を勤めるクラスの生徒２人に、ウォルターの表情がより明るくなった。
「２人とも言うねぇ。そういうの、キライじゃないよ？」
　その言葉を聴き、牡丹はコーヒーを淹れながら僅かにくすっ、と笑った。