久保田先生の女子力アップ大作戦！　手芸編！｜リアクション

久保田先生の女子力アップ大作戦！　手芸編！

　楽しい時間はあっという間に過ぎて、窓の外がオレンジ色になってきた、
「もうこんな時間かー。あとひとつくらいなら教えてもらえるかな」
「なら、編み物をやってみますか？　まだ触っていないですよね」
　綾花が持参していた毛糸入りの紙袋をさわりながら訪ねると、久保田先生はなぜかふんぞり返りながら不敵に笑った。
「そういえばやってなかった！　やたら難しそうなイメージだけど大丈夫？　私は始末の意味も忘れてたど素人だよ！」
「え。なんでそこ偉そうなんすか」
「突っ込んでくれる人がいてありがたい！　レオン君ありがとう！」
　久保田先生は少しハイになっていた。
「かぎ針なら覚えやすいですよ。すぐできそうなものだと……。レオンさん、何がいいでしょうか」
「ん？　んー、コースターが無難じゃねえかな。俺も毛糸なら余分にあるし」
　レオンの返答に綾花が同意する。艶のある黒髪がさらさらと流れた。
「そうですね。では、最後にコースターを作りましょうか。先生、好きな色の毛糸を選んでください」
「じゃあ、水色にしようかな。とってもきれいな色！」
「先生には明るい色が似合いますね。かぎ針はニット帽も編めるし簡単で万能です」
「ポンポンが付いた帽子とかかわいいよね！　ああいうのもいつか作れたらいいな～」
　久保田先生や綾花たちは毛糸を選び、鎖編みから始めるコースターを作り始めた。興味を持った他の生徒も彩やレオンに教えてもらいながらコースターを作る。久保田先生は編み物に適性があったようで順調に覚えていた。
「小学生のころにやったリリアン思い出すな～」
「あ。リリアンも、楽しい、ですよね……」
「うんうん。無心でやる作業、結構好きかもー」
　久保田先生と彩が視線を合わせてニコリと笑う。
「なんか、手芸って女の子の趣味ってイメージが強かったけど、実際にやってみると、みんな楽しいからやってるんだよねー」
「……俺は女の人の裁縫姿はいいものだと思うが。あ、いや何でもない」
　呟くように喋った修が慌てたようにあおいの手元から視線を外す。
「久保田先生。今、いいかしら？」
「お。なあに、蛇那伊君。紫ちゃん」
「私と尾鎌君で化粧ポーチを作ってみました。よかったら使ってください」
　落ち着いた声色で話しかけながら、紫が久保田先生にパッチワークキルトを使った化粧ポーチを渡す。大人の女性に似合う上品で可愛らしいデザインだ。花やツタの模様が刺繍されている。裏地やポケットも付いていてとても使いやすそうだ。
「刺繍部分だけあたしが担当したわ。あとは先輩にお願いしたの。センスもいいし縫製も丁寧でとても勉強になったわ」
「ありがとう。尾鎌君の刺繍も今日始めたとは思えないほどの出来で驚いたわ」
　久保田先生は感動して目がうるうるしていた。
「うわあああ。嬉しい！　今つかってるやつファンデーションで真っ黒になってるから、今日からさっそく使わせてもらうよ！　明日は満月さんに手伝ってもらったスカートはいて、髪もバレッタでまとめてくるよー！」
「私からは写真立てだ。デザインには自信がある。使ってくれると嬉しい」
　月詠がアイロンビーズで作った羊の写真立てを渡す。ドットで作られた写真立ては手作りの温かみと洗練された配色で、見ているものの心を和やかにさせた。
「いいフォトスタンドですねえ。せっかくだから写真撮りましょうよ！　新聞部たるもの、いつでもデジカメは持ち歩いているのです。さ、美和先生は真ん中ですよ」
　美咲紀の声にみんなが集まる。教壇にデジカメをセットして、それぞれがポーズをとった。
「なんか私のお誕生日みたい。照れるなー。ピース！」
　後日美咲紀から配られた写真には幸せそうな顔で横ピースをキメる久保田先生と、呆れたり笑ったりした顔の生徒たちがうつっていた。

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