久保田先生の女子力アップ大作戦！　手芸編！｜リアクション

久保田先生の女子力アップ大作戦！　手芸編！

「シュー君、シュー君。美和センセが静かなのって逆に新鮮ですねぇ」
「そうだな。何と言うか、邪魔をしてはいけない感じがする」
　美咲紀に話を振られて修が同意する。修は紅茶で喉をうるおし、近くにいるあおいを見た。本日、修と美咲紀は久保田先生に誘われて来た。あおいに好意を持っている修としては断る理由もなかったようだ。
　修とあおいの目が合った。
「修君と美咲紀ちゃんはぬいぐるみを作っているの？」
「です。正確に言うと私のは猫のおもちゃなのです。熱心に遊ぶのでお腹のわたがドバーと出ちゃったのですよ」
　美咲紀があおいに見せた羊のぬいぐるみは、腹部に穴が空いて中身が丸見えだった。
「俺も似たようなものだ。特にうちは猫が多いからな。買い替えるより馴染みのもののほうが安心して遊べるかと思ってから、先生に誘ってもらえてよかった」
「お気に入りのおもちゃなら捨てるのはもったいないよね。修君、ミルクちゃんは元気？」
「ああ、元気すぎるくらいだ。
　そうだ。ミルクはこのうさぎのぬいぐるみがお気に入りなんだが、どう直せばいいか教えてくれないか。耳が取れてしまったんだ」
「私でわかるかなぁ。借りてもいいかな」
「ああ。手芸、得意なのか？」
「お料理よりは得意かなあ。えへへ。
　……これは頭をまるごと作り替えたほうが本当はいいのかも。でも、猫のおもちゃならそこまでしなくていいのかなぁ」
　あおいが修から借りたうさぎを丁寧に点検する。美咲紀はふたりの様子を微笑ましそうな様子で見ていた。
「美咲紀ちゃん、ぬいぐるみ作っているの？」
「美和センセ！　いえ、これは修理なんですよー」
　気が付くと美咲紀の横に久保田先生が立っていた。
「ふふ、私も美和センセとおなじでお裁縫は苦手なのです。でも、せっかくなので修繕技術を磨いて、あわよくばおもちゃを手作りしてみたいなーなんて思っていたのです」
「こういうの流行ってるみたいだね。けりぐるみって言うんだっけ」
「よくご存じですね。これは元々普通のぬいぐるみだったんですが、結果的にそんな感じです。本当のけりぐるみは細長いものが主流で、飼い主さんによってはまたたびとか入れるみたいですねー」
　美咲紀がスマホで検索したものを久保田先生に見せる。ついでに一緒に猫動画を見て和んだ。
「もふもふー。ペットのいる生活って楽しそうだなぁ。私も猫とかハムとか飼いたい。うち、ペット飼えたっけ。ペット飼ったらかわいがっちゃうだろうなあ。おもちゃいっぱい買っちゃいそう」
「おもちゃは一度買ったら止まらないのです。手のひらサイズのネズミさんとか、可愛いのいっぱいできりがないのです。むー、作り方がわかればチャレンジするんですが……」
「ここは満月さんに聞いてみようか！　ごめーん、ちょっと聞いていい～？」
　美咲紀の返事を待たずに、久保田先生は満月の元に向かってしまった。
「せっかちな人ですねえ。大人なのに、大人っぽくないというか。ふふ」
「おーい。美咲紀ちゃん、こっちこっち」
「はーい。今いきますよー」
　大きな声で手招きされ、美咲紀はとことこと大人たちのもとへ向かった。

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