久保田先生の女子力アップ大作戦！　手芸編！｜リアクション

久保田先生の女子力アップ大作戦！　手芸編！

　生徒たちは手芸ジャンルの近いもの同士並んで座り、雑談をしながら作業を進めていた。色々な人に手芸を教わることにした久保田先生が最初に向かったのは上下左右と旅鴉月詠のいる場所だ。寝子高には卒業生からの寄付などで手芸の材料がたくさんあり、左右たちは自由にそれらを使うことができた。
「やっほー。左右ちゃん、月詠ちゃん。何やってるの？」
　久保田先生が尋ねると左右が扱っていたワイヤーの先端を見やすいように持ち上げる。
「私はビーズをお借りしてバラを作っていましたの。細かい作業、結構楽しいですわ！」
「綺麗だね～！　赤や黄色のバラがたくさんあって、すごく華やか。近くで見てもいい？」
「もちろんですわ。ですわですわ♪」
　久保田先生が左右からバラをひとつ借りて眺める。ビーズが光を反射して輝く。左右は作り慣れているようで、久保田先生が感心している間にもふたつ、みっつとバラを生み出していた。
「手芸もまた芸術……。そのバラはアクセサリーのパーツにしたりしないのかい？」
　月詠が何かの図案をスケッチブックに描きながら尋ねると左右が「それはナイスアイデアですわ！」とほほ笑む。何かひらめいたようで手芸パーツをごそごそ探し始めた。
「月詠ちゃんもビーズをやるの？　これ、確かアイロンビーズだよね。なつかしいな～。私も子供のころにやったよー」
　久保田先生が月詠の前に並べられたカラフルなアイロンビーズを見て目を細める。
「よければみっちゃん先生に何かプレゼントしよう。どんな動物が好きだろうか？」
「作ってくれるの？　やったー！　何がいいかな～。ふかふかした動物なら大体好きだよ！」
「承知した。では早速作ってみよう」
　月詠はスケッチブックにサッと図案を描くと、アイロンビーズ用のボードにピンセットでビーズを乗せていった。白と黒のビーズがボードを埋めていく。
「月詠ちゃんは手先が器用だね～。どんどん絵ができていくよ」
「手芸もまた芸術なれば……。こういった分野は一通り心得がある」
　ビーズを並べ終わると、月詠はアイロンを適温に合わせて熱しアイロンシートをビーズに重ねる。力の加減を調節しながら何度かアイロンをビーズに押し付け、ビーズ同士がくっついたのを確認すると重石として本を乗せた。
「これでよし。帰るころにはできているはずだ」
「どんな風になるのかな～。できあがりが楽しみだね。ふふ、人が作業してるの見るのってなんか楽しいなー」
　頬杖をつきながらニコニコ笑う久保田先生。その後ろに白い影が忍び寄る。

「隙ありですの。ていっ」

「おっ？」
　久保田先生の頭に花が咲いた。
「バレッタの金具があったので先ほどのビーズのバラを付けてみましたの。春らしくて素敵ですわ。手鏡をどうぞですわ」
「髪飾りか～。いつも適当に結んでるだけだから新鮮！」
「わかりやすく女子力アップじゃないか。上下はいい仕事をしたな」
「おほめに預かり光栄ですわっ。先生も可愛いものを装備して、レベルアップですの！」

　チャラララッチャッチャッチャーン！
　久保田先生の女子力が上がった！
　久保田先生はスキル「髪形に気をつかう」を覚えた！

「むしろ、今まで気をつかっていなかったんですの？」
　左右の素朴な質問に、久保田先生は薄笑いを浮かべながら視線を逸らした。
「あえて言おうみっちゃん先生。女子力は一日にしてならず。磨き続けることが大切でありゅとぁぁあ何をすｒ」
　格好いいセリフを決めようとした月詠は途中で久保田先生に両側からほっぺをむぎゅーと潰されてしまった。

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