そうだ、秋を探そう｜リアクション

そうだ、秋を探そう

【秋会事納】

　食後はみんなでゆったりとくつろぎながら秋探しを続行することになった。
　昼食タイムをカナリア姿で過ごしていた桜井ラッセルはそのままどこかへ飛び去ったかと思うと程無くして、人間の姿で一行のもとへやってきた。
「よー！　なんか賑やかだなぁ！　山に入ってるの見て気になって来てみたんだが、何会だこれ」
　屈託のない笑みを浮かべてしれっとそう語るラッセルに、正体を知ってる八神修や椿美咲紀、後木真央などは思わず苦笑してしまう。
「なるほど、秋探しねー。じゃあ俺も一緒していいか？　素敵なものを見つけるのは得意なんだ。俺は寝子高一年の桜井ラッセル。よろしく頼むぜ、ちびっこ達」
　ラッセルは小島海美、双葉由貴、椎名あさひら小学生に人間の姿で改めて自己紹介をした。
　かくしてラッセルを加えた一行は秋を探してさらに九夜山を奥へと進む。

　　　＊　＊　＊
　
「あ、ぼうしをかぶったドングリだぁ」
　道中、ふいに弾んだ声を上げたのは椎名あさひだった。
「えっ？　あさひちゃん、どんぐり見つけたの？　わたしにもみせて！」
　海美が目を輝かせて、あさひの手の中を覗き込む。
「へー、どんぐりかぁー」
　と、由貴も年相応の少年らしい表情でたくさんの種類のどんぐりを見比べる。
「そういえば昔の人はどんぐり食べてたってほんとかなぁ？　」
　あさひが思い出したように言うと、
「よく知ってるね」
　と、修が感心したように言って、彼女の手に乗ったどんぐりのうちから一つを選び取って器用に皮を剥いた。
「これはマテバシイだから生でも食べられるよ。たくさん拾ってお土産にしよう」
「へぇー」
　あさひは皮の剥かれたマテバシイのどんぐりをしげしげと眺める。
「わたしもマテバシイたべたい！　でも、ほかのどんぐりはたべれないの？」
　海美が訊くと、
「どんぐりは食べるだけじゃないぞー」
　と、ラッセルがおもむろにリュックから工作道具を取り出して、どんぐりで何かを作り始めた。
　小学生達の視線がラッセルの手もとに集まる。
　瞬く間にラッセルはどんぐりゴマをつくってくるくるっとそれを器用にまわしはじめた。
「「「おおっ！」」」
　と、小さな観客達の歓声があがり、ラッセルは少し照れ臭そうに、
（なんか小学生の頃を思い出すな）
　と微笑む。
「どんぐりコマか。懐かしいな、俺もよく子供の頃にやったよ」
　修もその光景に懐かしそうに目を細めて、爪楊枝でコマやヤジロベーを作り始める。
「へー、シューくんにもそんな時代があったんですねー、意外ー」
「……意外？　そうかな」
　美咲紀の思わぬ反応に、修は少し困ったように笑う。
「あー、いわし雲だぁ。秋のお空によく出るんだよってお父さんが言ってたよ」
「へー！　あさひちゃんものしり！」
　海美が尊敬の眼差しを向けると「えへへ」とはにかむようにあさひは笑う。
「せっかくだから写真撮っておこうっと」
「むむっ。あさひちゃん、なんだか将来はいい新聞部員になりそうなのだ！　真央ちゃんも負けていられないのだ！」
　どんぐりコマなどを一緒につくって秋探しの宿題に協力していた真央も、新聞部魂に火をつけられたように撮影を再開し始める。
　子供達と遊ぶラッセルや、秋の植物について子供達に教える美咲記の姿なども許可を取りつつ激写。
　記録したデータはもちろん後日みんなに送って共有する予定だ。

　かくして楽しい時間はあっという間に過ぎて――。

「よし、陽も傾いてきたし、今日はこのあたりでお開きにするか」

『は～い！』

　ツアーリーダーの八神お兄さん（？）の一声で、楽しい秋会は幕を閉じることとなった。