本日限り！　なりきりチャンバラ劇団公演です｜リアクション

本日限り！　なりきりチャンバラ劇団公演です

●成敗　闇を斬る！　

【序ノ幕】　三ツ闇浮上　（辻斬り、必殺天誅人）

　東風（こち）が月を覆う雲を流し、青茂る柳の葉を撫でる宵の事。
　木戸番人の夜間拍子木を鳴らす音が、堅牢に雨戸を閉ざした青白い市中に響く。
　襤褸の着物の裾を足に纏わりつかせ、抜き身の刀を握る鬼面の辻斬りと、名もなき岡っ引きがはち合わせたのは、ただの不運。
「こんな夜更けに一体誰でぃ……ッ　ぐはっ！」
　月光を映す白刃一閃が、岡っ引きの身体を斬り裂いた。

　──　最近の世間では辻斬り事件の話で持ち切りだった。
　鬼面を被り、どんな侍も一刀で絶命させ、修羅を語る鬼の所業。
　夜陰に紛れ、見回り同心、酔いどれ商人。遭遇した男は全て、翌朝死体となって発見された。

　そして昨夜、殺された岡っ引き。
　泣きすがる哀れな幼子が僅かな金を握りしめ、無念の仇討を依頼する。

　正義か悪か、闇に属した必殺天誅人の二人が、その僅かな金を握り返し、声を響かせる。
「こいつぁ危険な山だ。辻斬り事件と見立てた後ろにゃ、あの冠部骨衛門が居る」
　──　悪代官・冠部骨衛門（かんべ・こつえもん）。
　天下の暗部を掌握し、非道を尽くす、闇の者なら知らぬ者無しと云わしめる悪人。
「敵のデカさは関係ないで。それに、これははした金でもない。この金にはごっつ大切なもんつまっとる」
「……判ってるさ」

　死人の怨敵を討ち
　人非人共の跳梁跋扈を赦さず

　闇に紛れて誅殺す
　──　人呼んで必殺天誅人

「誅殺、承りて候」

【序ノ幕　─弐─】　舞台裾　（お銀）

「ふふ、コイツはいい事を知ったよ」
　天誅人が去った後、ひょっこりと、遊女を想わせる出で立ちの女──女狐のお銀の白い顔が闇から浮かび上がった。
　白い指を折りながら、ひぃふぅ……と数え、朱色の唇を微かに吊り上げる。
「辻斬り事件に天誅人が動き出した……。この情報を、ある商人に売れば金が転がりこむねぇ」
　金と愉楽が好物と嘯くお銀。
「けれど……」

　一つ、鬼面の辻斬り。
　二つ、怨嗟を晴らす冷血無比の天誅人。
　三つ、非道の悪代官。

「辻斬りに天誅人。それに、もう一つ正義の味方も加われば、楽しい事になりそうだ」
　天誅人が動くのは構やしないが、それじゃあ正義には、未だ足りない。

　一人、心当たりがある。
　国の誰もが噂で知っているあの人物さ。
　ああ、我ながら、いい思いつきだ。

　正義の味方と非道の悪人。
　まだまだ役者は増えるだろう。
「ねぇ。『アンタ』。私と一つ賭けをしてみるかい？」
　お銀は、くるりと、その場を回り、誰に語るでもなく、言葉を投げた。

　果たして、最後に笑うのは、一体誰だろうねぇ──？

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