不思議なお菓子を召し上がれ？｜リアクション

不思議なお菓子を召し上がれ？

「不思議なことが起こるかも知れないよ？」
　店主のその言葉に、リリア・エールヴァールは目を輝かせて金平糖を見つめていた。
「ほんと？　どれにしよっかなあ」
　そこへやってきたのはリリアと同じ学年の霧生穂月。こちらも物珍しい金平糖の屋台に足を止めた。
（金平糖……すきだったよな）
　いの一番に浮かんできたのは穂月の初恋の人。
　お土産に買っていこうと屋台に近づくと、その気配にリリアが顔を上げた。
「あ！　えっと…同じ学年だったよね、こんにちは♪　僕はリリアだよ」
「ああ、リリっていうんだ、ボクは穂月」
　クラスは違えどお互い顔を知っていたふたりは自然に打ち解け、並んで金平糖の瓶を覗きこんだ。
「どれが美味しそうかな」
「僕はこの紫のがいいな！　一番きれいだもん♪」
　リリアの指差したききょうを、店主は「まいどあり」と小壜に詰めてゆく。
「それじゃボクも同じの」
「はいはい」
　きらきら光る小壜を手にすると、ふたりは夕焼けの道を歩く。
「さっそく食べちゃおうかな！」
　リリアは壜を開けると、ぱくっと金平糖を口に入れた。その様子を穂月は羨ましそうに見ている。
「どうしたの？　食べないの？」
「これ、お土産に買ったから……」
「それじゃあ僕の、ちょっとあげるよ」
　そう云うとリリアは穂月の手にぱらぱらと金平糖を出した。
「こんなに、いいの？」
「いいよ！　ねえ、美味しいから早く食べてみて♪」
　すすめられ、おずおずと金平糖の口に入れた穂月。その顔がみるみる明るくなった。
「美味しい！　甘いの苦手だけどこれなら食べられるかも」
「でしょ！」
　だがしばらく食べ続けていると、ふたりにも異変があらわれてきた。
「ん？　穂月そんなに背高かった？」
「リリも何だか色んなところがふっくら……って、やっぱり！　ボクら大きくなってるよ！？」
　さっきまで140センチそこいらだった穂月の身長は、ゆうに30センチ以上高くなっている。
　リリアも可愛らしい容姿はそのままに、全体的に丸みを帯びて女性の色気のようなものが出ている。
「そうかなあ？　確かに穂月はおっきくなってるけど」
　首を傾げて自分の身体を見回すリリアを見て、穂月は心の内でニヤリと笑う。
「そうだよ！　例えばリリのこことか、こことか……ほらこんなに！」
「わあ、ふかふかだね！」
「それからこんなところも……」
「ほんとだ、弾力がついてる！」
　どさくさに紛れてリリアのマシュマロボディを触りまくる穂月。
　だが、リリアも特にお触りを叱ることもせず、自分の変化に素直に驚いているばかりだった。
（恋とお触りはベツモノだよね！）
　触れるときに、触るべし。
　小５にして男の欲求に忠実な穂月の本音を知らないまま、リリアは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。
「すごいすごい！　僕たち大人になっちゃったんだ！　……でもなんでだろう？」
「この金平糖じゃないかな？　食べた後すぐこうなったし」
「そっか、穂月頭いいね！　店主のおじさんが云ってたのってこういうことだったんだー♪」
　大人になれたことにテンションが上がったリリアは、ねえねえと穂月の腕に腕を回した。
「穂月、折角だから大人っぽいことしようよ！」
「えー。例えば？」
　リリアは待ってましたとばかりに、町の方を指差した。
「お買い物したいの！　大人のお洋服屋さんに行こう、すっごくかわいいから！」

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