あやかし学校運動会｜リアクション

あやかし学校運動会

「海晴ちゃぁぁん、何処にいるのぉ……」

　気が付くと突如、霧の立ちこめる山中に１人放り出されていた七雅麗音は、訳も分からずもう涙目になっていた。
　しかし少しすると、霧は晴れてきて、森の中にあるあやかしの学校が見えてきた。

「あやかし学校……妖！？　えっ鬼とかそういう類よね妖って！
　海晴ちゃんと居たのに、いつの間にこんな所に迷い込んでしまったの？
　ううっ……ホラーとかそういう系は苦手なのにっ、ホラー系怖いし苦手で嫌いなのよ！
　いやぁぁぁぁっ、酷い目にあいたくな～いっ……」

　麗音はひとしきりぼやいたあと、他に行くアテもなく、どうやら自分の運命はこの運動会に参加する事であると理解し、観念したのであった……
　それに良く見ればあやかしも、鬼のように恐ろしいものばかりでなく、『雪女』や『かわいすぎおばけ』、『妖狐』など可愛い物もいるようだった。
　とにかく女は度胸。堂々としているのが一番と、考え事をしていると不意に声をかけられた。

「よう、そこ行く綺麗なあやかしお嬢ちゃん！　どうだい俺と深夜の二人三脚をランデヴーしないかい？」

　声をかけてきたのは、女好きのサンマおばけであった。その姿は手足が生えて直立したサンマで、どこかの島の観光大使にそっくりであるが、多分気のせいであろう。

「きゃっ！　ごっ御免なさいっ、驚いてしまって！」

　用心はしていたものの、やはりあやかしに声をかけられて麗音は恐怖を隠せなかった。

「あっあの、私に何か御用かしら？　……一緒に二人三脚？私と！？
　おっお気持ちは嬉しいんだけど、えっと、その……」

　何とか微笑みながら応対するも、声はうわずってしまう。
　麗音が困っていると、そこへ威風堂々としたもふもふのライオンが現れ、救いの手を差し伸べた。

「何を言うか、そこのサンマおばけ。その美しい女人は俺とペアを組む事に決まっているのだ。
　だから、諦めて立ち去るがよい」

「な、なんだってー、それは一足遅かったぜ……悔しいが男らしく諦めるぜ」

「御免なさい、私はこの人と出るわ。私を誘ってくれて有難う。
　ライオンさん助けてくれて有難うね」

「俺は海晴・メルブリーズ。貴方は美しい！なんと美しい女人だ……！
　名はレオンと申すか……名まで美しい響きだな……」

　サンマおばけをやり過ごした二人は自己紹介を交わす。海晴は七雅を女性と勘違いしたまま気付かず、背の高さも、男性特有のしっかりした骨格も安産型なのだと思い女性だと信じ込んでいた。

「御主の為に、全力を尽くして一番星をとって見せようぞ！！」

　麗音・海晴ペアの相手は翠響・丸美ペアだ。
　スタートと同時に両ペアともに全力ダッシュ。少し行ったところで丸美が転んでしまい、その間に麗音・海晴ペアが大きくリードするも後半でバテてしまい、その差が縮まるも、動けなくなった麗音を海晴が背負って走ってそのままゴール！
　勝負は麗音・海晴ペアの勝利に終わった。

「……入賞……」

　勝利に湧く表彰台で麗音は嫌な汗を流していた。

「コレ、飲まないと、ダメ……？」

　彼女が涙目になるのも無理はない。勝者の二人に差し出されたのは、腐敗カエル絞りジュース。
　
「アレ美味しいんだよね～貰えなくてホント残念だよ～」

　表彰台の下から眺める丸美がうらやましそうにそう言った。

「えええー、あんなの本当に美味しいのー？」

　見るからに不味そうだと翡翠はげっそりするが、丸美は

「だって大好物なんだもん。…イモリの目ケーキとか、カタツムリのくさやと同じくらい」

　と目をキラキラさせていた。

「レオンは飲まぬのか？　美味だぞ」

　海晴は豪快に祝杯をジュルルルッグビッ！っと一気飲み。

「ほら、飲め。元気な子が産めぬぞ」

　海晴は麗音にジュースを飲むよう促し、麗音は涙目で逃げ回るのであった……