あやかし学校運動会｜リアクション

あやかし学校運動会

　お腹が膨れた所でいよいよ勝負本番である。
　出発ゲートに行くと、そこには『雪女』の湊面と『かわいすぎおばけ』の小萩が先に到着して待っていた。

「わあっ……」

　人見知りの激しい護はそっと兄の後ろに隠れるが、湊面と小萩はニコニコと手を振る。
　
「こ、こんばんは……」

　兄の裾に捕まりながらおどおどと挨拶を返す護であった――

　そして二人三脚開始。

「よーい、どーん！」

　不運にも最初の一歩目で足を躓かせて転んでしまう護。

「うわーん、痛いー」

　たちまち護の目から大粒の涙が溢れだす。

　先行した『かわいすぎペア』は、湊面の妖力で地面を凍らせて牽制に努めつつゴールをめざす。
　転んだ護の事は気の毒だがこれは勝負なのだ。

「みんな、もう、行っちゃったよ……もう追いつかないかも……」

　ぐすぐすと鼻を鳴らす護を修は励まし、諦めず頑張ろうと勇気付ける。

「うん、僕、ひっく、頑張るね」

　護は涙をぬぐい、兄弟の阿吽の呼吸で抜き返そうと頑張る。
　ぎゅっと目を閉じ集中する。やがて２人の妖力がシンクロして、妖狐兄弟は合体妖術が使えることに気付いた。
　飛ぶように、一足飛びに、一瞬の光のように、狐妖怪の高い魔力で全ての速度が上がっていく……
　周囲の音が消え、ものが止まって見える……

「合体妖術『超神速』だ！　行くぞ、ゴールのテープを噛み取るんだ！」
　
　――その結果は、最後の巻き返しはすごかったが、前半に充分リードを作った『かわいすぎペア』の勝利だった。

「あ、ちなみに入賞商品って何……」

　渡されたのはフレッシュなカエル搾りジュース。
　そのコップを覗いて凍りつき、正気に戻る湊面。

「～！！？！？な、なな……！！？」

　湊面は声にならない悲鳴を上げ、小萩とまだ足を結んだままなのを忘れて猛ダッシュ！

「ぎゃあああ、痛い痛い……カエルジュースはたぶん発酵食品でコラーゲンなので美容と健康に良さそうな感じですけど～」

　湊面に引きずられて転んでしまう小萩だった。

　そのてんやわんやな様子を見て、護も釣られて笑ってしまう。

「えへへ、楽しかったね。おうち、かえろー」

　と言いながら兄の尻尾にダイブ。妖狐兄弟は仲良く手を繋いおうちへ帰るのだった。