あやかし学校運動会｜リアクション

あやかし学校運動会

「あれ……あたし、妖怪になってる？」

　篠原翠響は突然の不思議な出来事に驚いていた。
　彼女はどこにでもいるごくフツウの中学生だった。……はずだった。
　本来なら九夜山へなど行く用事もなく、その日は旧市街へちょいと買い物へ出かけに行った……はずだった。
　が、どうしたわけか、様子がおかしい。いつの間にか学校らしい場所に立っていた。
　それも自分の通う中学校ではく、よく見れば『あやかし学校、運動会』とかいう怪しい立て看板が立っている。

「へ？」

　とか思いつつ、周囲を見渡すと……いつの間にやら辺りには妖怪がうじゃうじゃいるではないか。
　いったいどうなってるのかと訝しむが、どうやら自分も妖怪になっているらしい。
　通り過ぎる妖怪の子供たちが親しげに挨拶して来るので、一応翠響も合わせて返事を返す。
　どうやら、二人三脚には強制参加らしいが、どんなのがパートナーになるのか興味は尽きずにいると……

「あれ？　化けるのがすごく上手い子がいるよ～」

　と、とぼけた声を出して話しかけて来た妖怪がいた。
　彼女は岡野丸美。
　のほほんとした化け狸のあやかしである。

「今、しっぽをアライグマみたくしましま模様にするのがマイブームなの。かわいいでしょ？
　校則違反？　堅いこと言わないでよぉ～
　それにしても君、とっても人間臭いねぇ～　しっぽも無いし…化け方の試験もばっちりだね」

　丸美はそう言いながら、翠響のお尻をなでたりお腹をむにむにつまんだり……

「ひゃん！」

「……あ、いやだった？　ごめんね～」

　あくまでもとぼけた様子の丸美。翠響はすっかりそのペースに呑まれてしまい、気が付くと二人三脚のパートナーを承諾していた。

「え……と？　あれ？　今年は運動会、もうやったんじゃなかったっけ？
　ま、いいやー。楽しいことは何度やっても楽しいもんね。
　二人三脚は任せて。誰とでも、ちゃんとその子に合わせた大きさに化けれちゃうもんね」

　そう言いながら丸美は二人の足を赤黒い不気味なロープ（妙に湿っている）で結び合わせる。
　翠響は妖怪との初めての体験にドキドキしながらも内心を気取られないようにしていた。

「それでは選手の皆さんはスタートラインに集まって下さーい」