黒きミサ―中二病を告解せよ―｜リアクション

黒きミサ―中二病を告解せよ―

「まあまあ」

　そう言って2人の仲裁に入ったのは、異形の人物だった。
　ネームプレートには「カボチャ」とある。
　ローブの他ジャック・オー・ランタンのようなものを被っている。
　声もボイスチェンジャーと徹底している。

「ウチはあまり中二病とか意識したことはないナ。浪漫はモノを作る上で必要な要素だから」

　コミカルな口調と仕草が、どことなく魔女の使い魔っぽい。

「大事だよ浪漫は。ゲーム好き？　ウチは好きヨ。謂わば中二を極めなければ出せない世界観もアルネ。自分の脳内に映るキャラと会話して実現したものヨ。漫画もイラストも」

　姿はカボチャのお化けだが、言っていることは結構真面目だ。
　ノックアウトされたシラユキをのぞいて、救世主もタルトもプロフェッサーMも刀も耳を傾けている。

「我が主は魔女を名乗ることがアルが、魔法を使える訳じゃナイ。絵なんて誰でも描ける。タネが解れば奇術じゃない」

　スターのように視線を集め、道化師のように振る舞うカボチャ。

「掃除・洗濯・料理、簡単デショ？　でも本当にソウ？　絵も奇術も家事もその他あらゆる事に対して技術がある」
「僕も絵が上手って言われるけど、確かに簡単じゃないね～。確かに技術だ」
　
　タルトが深く頷く。

「その技術を遺憾無く発揮すれば、精通していない者にはそれが魔法のように見える。だから主は魔女を名乗っているヨ」

　ミサが先ほどの熱狂とは違う、不思議な雰囲気に包まれた。

「中二病とは大人になりかけの人間達が少し背伸びしているダケヨ」

　カボチャは口調をまた少し変えて続ける。
　フィナーレだ。

「悪ぶってる自分が格好いい。他人と違う自分が格好いい。色んな事を批判している自分が格好いい。例えば好きでもない珈琲を無理して飲んでみたり、煙草を吸ってみたり、女遊びしたり、そうした経験はある意味大事な事ヨ。今恥ずかしいと思っているナラもうしないはずダカラ。そうして大人になっていくノネ。逆に、いつまでも子供でいる事もできる。それもある意味大事ヨ」

　カボチャはそう言って大仰にお辞儀した。
　どこからともなく拍手が送られる。
　大絶賛ではない。
　だが、みなからの、静かな深い賛同だった。

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