テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。｜リアクション

テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。

　畑中は数学が苦手だ。
　お店の手伝いでレジ打ちをこなす彼女だが、方程式を当てはめたり証明問題を解いたりするとなると話は別だった。
「もうすぐテストがあるアル。数学勉強しないとー、誰かに教えてもらわないとー。また美食メンバーで勉強会したいアル」
　神魂でカオスな内容になったとはいえ、お互いの苦手科目を補えたあの一夜漬けは有益だった。
「またやりたいアルーって、チャーハン？」
　畑中が気が付けば、周囲から聞こえてくる『チャーハン』の単語。
　なんでチャーハンなのだろう、と疑問に思っていると、道の角からカメラを抱えたコック姿のおっさんが飛び出してきた。
「チャーハン食えよッ！」
　おっさんは叫びながら畑中を激写！
　眩いフラッシュに畑中は目を瞑ってしまう。
「ヒャウッ……！？　眩しいアル！」
　畑中が怯んでいる間におっさんは逃走。
　呆然とする畑中が我に返る。
「えっと、私、今……何考えてたっけ？」
　ぼんやりとする頭を捻る彼女は、次の瞬間、カッと目を見開いて口から出た言葉はというと？
「チャーハン！　チャーハンアル！」
　――チャーハンであった。
「私、ラーメンの事ばっかり考えてたけど、チャーハンも頑張らないといけないアル。だって、ラーメンにチャーハンは必要不可欠アル」
　畑中は天啓にも似たひらめきを得ていた。
　ラーメンの傍らには、いつだってそっと脇を固めるチャーハンがあるではないか。
　つまり、ラーメンだけを極めても片手落ち……！
　ラーメン屋の娘ならば、チャーハンも極めるべきだと畑中は悟ったのだ。
（※ちなみに、これは全て神魂効果です）
「こうしてはいられないアル、今すぐチャーハン作りたいアルー食べたいー」
　チャーハン欲求の高まりを彼女は抑えることが出来なくなりつつある。
　今すぐ帰宅して、厨房で中華鍋を振るいたい衝動が全身を駆け巡るのだ。
「でも、まだここはシーサイドタウンアルー、うちの店まで遠すぎるー」
　下校途中のこの体の火照りと疼き（※チャーハンです）を抑えるため、畑中は必死に思考回路をぶん回した。
　その結果、辿り着いた答えは……？
「そうだ、どこかの店でチャーハン作らせてもらうアル！」
　厨房を借りて、作らせてもらうという結論に至ったのだ。
「確かこの近くに『日本海』っていう中華料理店があったアル、あそこなら食材も調理道具も火力もばっちりアル」
　そうと決まれば中華飯店『日本海』へ行くしかない。
「それに周りがこんなにチャーハン連呼してるアル、きっと誰もがチャーハンを求めてるはずアル。私が作らなきゃ誰が作るアル！」
　畑中の料理人魂とチャーハン情熱に火が付いた。
　そこへスマホに如月から着信が入る。
「はい、庚君。どうしたアル？」
『……よう、畑中。さっき、テオの言葉を聞いたか？　どうやらチャーハンで騒動が……』
「ごめんアル。私、これから『日本海』でチャーハン作りに行くアル。騒動は任せるアル！」
　プツッ、と通話を切ると、畑中は足取り軽く『日本海』へ向かうのだった。

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