小学生、借り猫競走！｜リアクション

小学生、借り猫競走！

　海美と由貴は校長室に急いだ。
「貸せよ、開けてやるよ」
　由貴が鍵を開けて中に入るのを追い、海美も部屋に飛び込んであたりを見回す。
「子猫……どこだろう？　あっ」
　机の裏側を覗き込むと、脚元に箱があった。子猫がぴょこんと顔を出した。二匹。
「こ……ねこだ！」
　子猫を見つけて声を上げようとした海美だが、大きな声を出したら驚かせてしまうと気づき、小声になる。
　幸い人を怖がる様子はなく、こっちを見つめている。
（うわわわわ……かわいい）
　由貴も内心で声を上げたが、平静を装ってそっと子猫に近づいた。
「おいで、こわくないよ」
　一匹を優しく抱いてバスケットに入れ、辛抱してくれよと撫でる。
　海美もそれに習っておそるおそる子猫をバスケットに入れ、校庭に戻る。
「バスケットにそーっと入れて、そーっと歩こう！」

　一緒にいた由貴との距離がどんどん離れて、後から走ってきた上級生が追いついてくる。
「お先に！」
　鍵猫とでぶねこを二匹ともバスケットに詰めた庵が海美を抜いていく。
　二匹入ったことで重くなったが、バスケットの中が安定し猫が暴れなくなったようだ。
「しまった、どんどんぬかされる！　けど、こねこだからしかたない！」
　悔しがりながらも、海美はバスケットを揺らすまいと、そっと進んでいく。

「やった！」　
　なるべく慎重に走ったもののトップをキープした白組の由貴がゴールイン。
　これで白組逆転の可能性が出てきた。　
　すぐにバスケットからだして、子猫を抱き撫でる。
（やっぱり、かわいい……）
　相好を崩してつぶやく。
「ありがとな」
「ミャー」
　その様子を後からゴールした庵に見られているのに気づき、由貴は真っ赤になった。
「な、なんだよっ」
　強気に言う由貴。
「いや、子猫は可愛くてうらやましいな……」
「ぶみゃー」
　バスケットから出たでぶねこは、なぜかまた庵の頭の上に上っていた。
「やっとついたー！　またそーっと校長室にかえしにいこう！」
　海美がゴールした。
「ああ、そうだな」
　由貴の頬がまた緩む。
　
　その後から、白燕と姫が戻ってきた。
「無念じゃ」
　結局テオはつかまらず、ボロボロになった白燕が言う。
　そして姫は、ちょっと困ったようにバスケットを開け。
　審判の先生ににっこり笑ってみせた。
「ほんものじゃないけど、はちわれねこさんです。だめですか？」
　バスタオルの上には、リコーダー入れ袋の「てお」。
　先生は微笑んでOKを出してくれた。
　