小学生、借り猫競走！｜リアクション

小学生、借り猫競走！

◎運動会、スタート！

　いつもは広い寝子小校庭は、観客のお父さんお母さんで埋めつくされていた。
　小島海美は、初めての小学校での運動会にわくわく。
「あっ、りゅうきおにいちゃんも赤ぐみ？」
　同じ赤い体操帽をかぶった曖浜瑠樹を見つけ、声をかけた。
　ちなみに寝子小運動会では鉢巻きも体操帽もOK。３年生までは体操帽をかぶる子が多い。
「うん、オレは赤組だよ。小島さんもかあ」
　のんびりと瑠樹が答える。
「あのね、わたしうんどう会、たのしみにしてたの！　だって、学校におとうさんとおかあさんが見にくるんでしょ！」
「うん、うちはお父さんお母さんや叔父さんも来てくれてるし、色んな競技で頑張るよぉ！」

　そのころ白組の入場門では、椎名あさひが気合を入れていた。
「今日はすごーく楽しみにしてたうんどう会！　同じ白組の子たちといっしょにがんばろー！　えいえいおー！」
「おう、えいえいおー！」
　双葉由貴も拳を突き上げる。
「そういえば、えいえいおーって、なんでえいえいおーなんだろうねぇ……？　ゆきくん、わかる？」
「ええっ？　そ、それは……ほら、入場行進始まるぞ！」
　あさひに聞かれ悩んだ由貴だったが、都合よく入場行進の音楽が流れてきたので自分の場所に戻った。
　
　手をしっかり振って歩きながら、海美はきょろきょろしている。
「おとうさんとおかあさんどこかな……あっいた！　おーい！　ちゃんとビデオとってねー！」　
　最前列でビデオを構える両親に手を振る海美だった。
　一人娘リアーネ・ライニオの初めての運動会を見る為駆けつけたニコ・ライニオとユリアナ・ライニオも張り切って手を振っている。
「リィ、頑張ってね」
　レジャーシートの上にはたくさんのお弁当。
　ユリアナは声楽家の仕事を休んで、張り切ってお弁当を作ってきたのだ。
　そのお弁当を運んできた夫のニコは、初めての小学校の運動会に興味津々だ。
「リアーネが出るのは、このダンスと……【借り猫競走】？」
　プログラムを広げたニコが首を傾げる。
「どこから猫を借りてくるのかなー」　
　
　開会式も終わり、いよいよ競技開始。
　ダンスやかけっこが披露され、声援と拍手が起こる。
「あさひの出番はかりネコきょう走だよー。出番まではいっしょうけんめいお友だちをおうえんするよ！　がんばれいおりちゃん！」
　この名場面をカメラに収められたらな、と思いながら声を張り上げるあさひ。
「うんどーかいだー！　白組ゴーゴー！　走る稲妻だー♪」
　白の鉢巻きを付けて気合十分なのは野坂庵。
「5回連続白組なんて愛着沸いちゃいそ。今年は応援優勝もそーごー優勝もどっちも勝つぞー♪」
『しっぽ取り』競技に出場する庵は、ショートパンツに白の尻尾をつけている。
「むっふっふ～いおりのしっぽ取れるかな～？」
「勝負事とあれば負けられぬな……。私が参加する赤組の勝利を目指すぞ！」
　赤い尻尾をつけてそう言うのは煌白燕。
　口調は男性のようだが、白い髪、赤い目のかわいい女の子だ。
「先天性白皮症」（アルビノ）の為、健康を心配されていたが、護身術として功夫をたしなむほど健康だ。
　尻尾を狙う庵をひらりひらりとかわす。
「むー、猫みたい……」
　仕方なく庵は狙う相手を変えることにした。

「面白かったー！　さて得点は……あっ、ちょっと負けちゃってる」
　二階の窓に大きく表示されている赤白の得点板を見上げ、庵は悔しがる。
「でも次の借り猫競争で追いつくからな～！」
　

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