小学生、借り猫競走！｜リアクション

小学生、借り猫競走！

○戦い終わって

　得点板に数字が入る。借り猫競争は赤組の勝利となった。
「これで午前の部を終了いたします。１時まで休憩といたします」
　放送と先生の指示に従って、子供たちはそれぞれの保護者の元に戻っていく。

　ユリアナはレジャーシートの上にたくさんのお弁当を広げてリアーネを待っていた。
　おにぎりにおいなりさんにサンドイッチ、玉子焼きにウインナーに唐揚げ、その他いろいろ。
「ちょっと作りすぎてしまったかしら？　リィ、何食べる？」
「うわあ、すごい！　ママのお料理おいしいから楽しみ」
「最初はおにぎり？　サンドイッチ？　デザートに林檎と梨もあるのよ。お友達とお菓子交換するためのクッキーも焼いてきたわ。飲み物は冷たい紅茶と麦茶」
　あれもこれも、と勧めてくるユリアナにリアーネはクスッと笑う。
「ママ、そんなに一度に食べられないわ」
「ユリアナちゃんの料理はいつでも美味しいけれど、こうやっていつもと違う場所、違う雰囲気で食べるのも最高だね。親子で食べるお弁当も美味しいし、僕は幸せ者だな」
　ニコもおにぎりを頬張りながら言う。
「午前の競技、頑張ったわね」
　サンドイッチを食べながら、ユリアナは優しく褒める。
「ダンスもとっても上手だったし、借り猫競争も……」
「応援してくれたのに一位になれなくてごめんなさい」
　おいしそうに唐揚げを食べていたリアーネの笑顔が少しだけ曇る。
「子猫さんはね、すぐに見つかったんだけど……」
　子猫の怪我を治してて遅れたことは内緒にしよう、とリアーネは思う。
「一位になることだけが大切なことじゃないのよ。一生懸命頑張ること、それが一番大事。パパとママはリィが頑張っている姿が見られて嬉しいもの」
　冷たい紅茶を飲みながらユリアナは微笑む。
「うん。ママのおべんとうおいしいよ。ごごもがんばれそう」
　笑顔に戻ったリアーネは、ふと子猫のことを思い出す。
「あの子ねこさんどうなるんだろう……おうちでかえたらいいのに。だめかな？」
「ああ……もし飼い主が見つからないなら、うちは一軒家だし、かまわないよ」
　ニコがユリアナに視線を向け、ユリアナも笑顔で頷いた。
「やったあ！　ありがとう、パパ！」

「おもったいじょうにうごいたので、おべんとうがおいしいんだよ！」
「お弁当の時間は一時休戦だぜ！」
　赤組と白組に分かれたが、玲音と庵は近くでお弁当を食べていた。
　お弁当パクパク物凄い量食べながら仲良く話す庵。
「あのでぶねこは重かったぜ」
「たいへんだったねえ」
　ふと、他の人のお弁当も気になった玲音が言う。
「みんなはなにをもってきたのかな？　のぞいてみちゃう！」
　たまたま隣にいたリアーネのシートの上のたくさんのお弁当が目に入った。
「うわあ、すごいね！」
「あの、よかったらお菓子交換しない？」
　玲音と同じく物怖じしないタイプのリアーネが、クッキーを差し出した。
「うん、するする！」
　玲音と庵も自分のお菓子を取り出した。
「よかったらお弁当も食べてちょうだい。ちょっと作りすぎちゃったの」
　ユリアナも笑顔を向けた。
「わあ、いただきます♪」

　翼は、木陰に入って、一人でお昼のお弁当を食べていた。
　昨日の夜に下拵えをしておいて、今朝自分で作ったお弁当。
　ぱぱッと食べようとしたとき。
「おねえちゃん、一人なの？」
　玲音が声をかけてきた。
（さっき借り猫競走に出てた……横浜の技術館でも一緒だった子だ）
　と翼は気づく。
「うん……お父さんもお母さんも忙しいから、いつものことなんだ」
　笑顔を見せる翼。
「もしかして今日のお弁当も自分で作った？　すごいな」
　庵も感心している。
　木陰でお昼寝をする時間は少し短くなったけど。
　ちょっと嬉しくなる翼だった。
　
　休憩時間ももう終わりだ。
「午後も頑張っていらっしゃい」
　ユリアナはリアーネを優しく抱きしめた。
　リアーネの後ろ姿を見送りながら、
「また来年の運動会も晴れるといいね」
　とニコがつぶやいた。
　

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
猫とのふれあいをお楽しみいただければ幸いです。
おかげさまで、楽しい運動会となりました。

最後までは書いていませんが、今年は赤組の勝利となりました。
勝った方も負けた方も、お疲れ様でした。
校長室の猫とテオ以外の猫は、リアで触れていなくても家で飼うことにしてかまいません。

それでは、またのご参加をお待ちしております。

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