小学生、借り猫競走！｜リアクション

小学生、借り猫競走！

「やっぱりだめかー」
　校長室の前まで行った玲音だが、引いてもノックしても扉は開かなかった。
「あきらめてべつのばしょをさがそう！　そういえばうらにすてられてたって話があったよね！」
（ひろってくるのと同時に、ほごできるんじゃないかな、かな！）
　そんな訳で歌いながら、学校の裏に急ぐ。
「ねこねここねこーねここねこー」
　猫はたくさんいるけど、そのへんに転がっているのはでっかい猫ばかり。
「こねこ見つからないけど、がんばってさがすよ！」
（ガッコウからはなれすぎたりしないようにちゅういしないとね！）
「できたらぶちねこがいいな、ぶちねこ！　いまのぼくのなかでのぶーむなんだよー！」
　すると、座り込んで帽子を脱いでいる勝治郎がいた。
「一匹ちょっとこっち来てくれよぉ」
　いつも被ってる帽子を猫じゃらしみたいに振っている。視線の先にはぶちの子猫。
（おびき寄せ作戦だ、傷が付いたら嫌だけどこれしか思いつかなかったし）
「いた、ぶちねこ！　せーせーどーどーのしょうぶをいどむよ！」
「わっ、静かにしろよ、にげちゃうだろ」
　勝治郎はあわてて指を口にあてる。
　玲音も小声になるが、譲る気はない。
「しょうぶないようはじゃんけん！　三回しょうぶだよだよ！　かったらつれていく、まけたらゆずってさらにさがす！」
「えーと……勝負をいどまれちゃにげるわけにはいかないな、よし！」
「じゃあ、しょうぶだよ！　まけないんだよー！」
「じゃんけん、ぽん！」
　勝治郎の勝ち。
「うー、次はまけない！　じゃんけん、ぽん！」
　次に勝ったのは玲音だ。
「やったー！　こねこ、まっててね」
　浮かれる玲音。勝治郎は真剣な面持ちになる。
「じゃんけん、ぽん！」
　勝治郎がガッツポーズを決めた。
　玲音はがっくり。
「ううっ、ほかをさがすんだよー」　
「待てよ」
　勝治郎が再び帽子をゆらゆらして見せると。
「みゃー」
　ぶちねこの後ろから、もう一匹子猫が顔を出した。
「来い来い！　そのままバスケットに……」
　後から来た猫が、勝治郎のバスケットに入る。つられてついて来たぶちねこに、玲音は優しく声をかける。
「ねこねここねこー、おいでおいで」
　玲音がバスケットにぶちねこを入れている間に、勝治郎は全力でダッシュ。
「よーし、このまま走って一番になるぞ」

　と、思ったが。
「ぎにゃー！」
「えっ」
　バスケットの中で子猫が転がってパニックを起こしているようだ！
「あわわ、ごめんよ！　一番になるには走らなきゃだけど、走ったら猫が大変なことになっちゃうし。うーん、えーっとぉ」
　玲音が追いついてきた。
「そっちのねこもあばれてるの？」
「うん、こうなったら両手でバスケットを持って揺れない程度に走ろう、一番になっても猫をぎせー（犠牲）にしてちゃダメだ、それじゃ番長失格だ！」
「うん、しっかくだ！」
　番長がなんだかわかってない玲音も、両手でバスケットを持って走ることにした。
（ゴールの順位は何番でも気にしないぜ。遅いとクラスの皆には謝らなきゃいけないけど、男なら言い訳はしない！）
　
　雄太が台車にバスケットを載せて猫を運んできた。
　道具の移動に使っているものを借りたのだ。
　勝治郎と玲音より、少しだけ早くゴールした。
「台車を使ってはいけないというルールはないからね」
　校長先生の一声で、第一回目は赤組の勝ちとなった。　
　
「きょうそうがおわったし元の所に返さなきゃ」
　と思った勝治郎だったが。
「でもお前って捨てねこ？　だったらおれの家に来てくれよ！」
「わあ、いいなあ！　うちもつれていきたいな」
　玲音が目を輝かす。
「犬もいるし、猫が1匹増えてもかーちゃんは怒ったりしないよ、おれ一生のお願いで飼えるように頼むからさ！」
　

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