【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～黒猫組サイド｜リアクション

【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～黒猫組サイド

　いよいよ、黒猫組最後の出し物となった。パフォーマンスのメインになるのは、これまたアイドルとして活動している夢宮瑠奈だ。瑠奈の他に、バックで盛り上げるメンバーをまとめる御剣刀、着ぐるみを着て踊る予定の龍目豪が事前にエントリーした。そしてもうひとり、黒猫組の「秘密兵器」も合わせて申し込み、400点満点を確保。他の演目にも出ていて得点には関係ないメンバーも入って、賑やかしをする予定だ。
「皆で念入りに練習した成果を見せたいところだな」
　バックダンサーらしく、黒のシャツとスラックスに身を包んだ刀が言う。
「きっと大丈夫さ。放課後あれだけ頑張ったんだから」
　探検部の勧誘で使った猫の着ぐるみを着た豪が答えた。
「応援部みたいに普段から練習してるわけじゃないし、創作ダンスの類もどちらかというと得意な方じゃないけど」
　青を基調としたチアリーダー風のコスチュームを身につけた瑠奈が口を開いた。手に持っているのは白黒のポンポンだ。衣装の色は空の色で、一筋の虹がかかっている。
「でも、みんなと自分を信じて頑張るよ。私、みんなに頑張ってって伝えたいから。みんな、一緒に頑張ろう！」
　アナウンスとともに、瑠奈を先頭に入場する。大事なのは、度胸と愛嬌とその場のノリだ。グラウンドいっぱいの観衆に向かってお辞儀すると、この日のために考えてきたオリジナルの歌詞で歌い始めた。
「K・U・R・O！ KURONEKO！いぇい！」
　可愛く、元気をもらえるような振り付けでポンポンを振る。後ろでは豪の入った猫の着ぐるみも一緒に踊る。刀もバク転やバク宙を練習通りバッチリと決め、瑠奈の歌に花を添えた。普段から体を鍛えていることが存分に生かされている。
「子猫大猫走る猫！みんな元気に駆け回る！」
　歌いながら、一生懸命に踊る瑠奈。体を回すたび、ふりふりのスカートがひらめく。
「さぁさぁここで見られるは、ねこねこしろくろ大決戦！どっちが勝っても楽しいけれど、ここには黒のねこだまりっ！」
（勝っても負けても体育祭！お祭りなんだから、楽しめないと損だよねっ）
　瑠奈の思いが、振りまく笑顔にこめられている。
「いつも仲良し白猫さんと、競ってめぐって高め合い！ K・U・R・O！ KURONEKO！いぇい！！」
　歌の区切りに合わせて、右手を高く上げてポーズを決める。グラウンドが歓声に包まれた。
　ちょうどその時だった。瑠奈たちのいる舞台に、一人の人影がずかずかと入ってきたのは―――
「り、理事長！？」
　拍手をしながら舞台に現れたのは、白いワンピース姿の桜栄あずさ理事長。どよめく会場をよそに、理事長は瑠奈のマイクを受け取って話し出す。
「応援合戦、盛り上がってるからつい来ちゃったわ。白猫も黒猫も頑張ってるわね！」
　出てきた声は明らかに少年の声。よくできた理事長の仮装だ。コルセットで腰を作り、ウィッグにリップクリームまで塗って、遠目には理事長にしか見えない。ギャラリーはどっと笑った。
「応援旗リレーも面白かったし、パフォーマンスも皆素晴らしいものを見せてくれたわ。でも、夢宮さんたちの歌と踊りは最高よ！見てるだけで一緒に歌いたくなっちゃう」
　声の調子は理事長そっくりで、グラウンドは更に爆笑に包まれた。
「白黒、どちらも頑張りなさぁい！」
　ここで、校長がお茶目に一喝。
「理事長の偽物、正体を見せなさい！本物はさっき飲み過ぎで保険室に運ばれましたよ」
　リップを拭いウィッグを取って現れたのは、八神修だった。華奢な体型が女装に適しているゆえできたパフォーマンスだ。これが、ネタを伏せられていた黒猫組の秘密兵器だった。