9月半ば。生徒たちが体育祭準備にいそしんでいたある日の放課後。
1年7組・
多喜 勇生は、熱く競技の練習に興じる生徒たちを何とはなしに眺めていた。
「頑張れ黒猫! ―――ま、競技は体育科に任しとけばいいけどねぇ」
勇生は応援の言葉を口にしたあと、ちょっと自嘲混じりに呟く。彼は、体を動かすよりは機械いじりなどのほうが性にあっているのだ。
「そんなこと、ないと思うなぁ」
後ろから、はきはきした声が聞こえる。
「うちの応援合戦は、聖火リレーみたいな恒例の『応援旗リレー』をやると、あとはフリーの応援タイムよ。来るもの拒まず、何でもありのルールだから、普通科や芸術科の生徒も毎年活躍するの。去年は、芸術科の生徒が歌で、普通科の生徒がコントをして盛り上げたっけ。もちろん、体育科もエールやダンスで活躍してたわ」
気さくな感じで話してきたのは、2年3組・
栗原 瑞穂だった。
「ふうん……芸術科の僕でも、活躍の機会はあるのかなぁ?」
「もちろん。芸術科なら服飾や音楽で勝負できるわ。しかも応援合戦でも得点が入るから、スポーツが得意でなくてもチームの役に立てるの。もしかすると、勝敗の鍵を握っちゃうかもね!」
「ちょっと、興味が沸いてきたかも……僕だって、一度は体育祭で活躍してみたいもの」
「当日飛び入り参加もOK! 考えてみたらいいわ。案外、他薦で知らないうちにエントリーしてるかもしれないけどね」
「おお、ここにも応援合戦に興味を持ってくれる子たちがいたか」
「―――こ、校長先生!」
ふたりの後ろにいつの間にか立っていたのは、校長・
雨宮 草太郎だった。
「体育祭は学校全体で楽しむ行事だ。スポーツが得意でないと活躍できないというのはいかにも寂しい。そんな生徒たちのためにも、応援合戦の時間があるのだよ。哲学者シトラス・ガムダンは言いました―――
『応援する者も、競技者の一員なのである』と……」
長い話が始まった―――瑞穂と勇生のふたりは苦笑交じりに聞くしかなかった。
さて、迎えた体育祭当日。生徒たちの声援が校庭のあちこちから聞こえ、体育祭はいよいよ盛り上がりを見せている。
そんな中、校内放送のスイッチが入り、実行委員のアナウンスが入った。
「続いては、寝子高流の応援合戦です! まずは前哨戦の伝統行事『応援旗リレー』から開始します。ルールは単純、裏山にある白・黒の応援旗を校内のコースを回って校庭に届ける! エントリーは今からでも大丈夫です!
そして、フリーの応援タイム! チアあり仮装ありエールあり、何でも構わないので思い思いにチームを応援してください! カオス、もとい自由闊達なアイデア、今年も楽しみにしています!」
哲学者シトラス・ガムダンは言いました。「応援する者も、競技者の一員なのである」と―――
皆様こんにちは、三城俊一です。
今回は、多喜 勇生さんと栗原 瑞穂さんにガイドに登場していただきました。ありがとうございました。
ちなみに、ガイド本文は白猫組サイドと相似形をしていますが、時系列はちょっとだけ後です。
だから何、ということはありません。
さてさて、今日のシナリオは「応援合戦」です。
必ずしもスポーツが得意でなくても、各々の得意分野でチームに貢献できる時間がこの応援合戦。
「芸術性」や「面白さ」、「熱さ」も評価対象ですので、速さ強さを競うほかの競技とはちょっと毛色が違います。
もちろん、体育会系のパフォーマンスも「運動技能」の観点で評価されますので、体育科生徒の参加も大歓迎。
参加資格はただ一つ! とにかくチームのためになにかしたい! という熱い思いを持っていることです。
(ただし他薦もOKなので、知らないうちにエントリーしている可能性もあります。)
では、ルールの説明です。寝子高伝統の応援合戦は2パートに分かれています。
A.応援旗リレー
裏山に置いてある白猫・黒猫の応援旗を、リレー形式で第1グラウンドまで運んできます。
聖火リレーの要領で、応援合戦の幕開けになります。
ルートは、
・裏山から山道を降りる(区間1)
・公道を通って正門まで(区間2)
・正門からテニスコート前(区間3)
・テニスコートから武道場前(区間4)
・武道館前からグラウンドまで(区間5)
というものです。
勝者は、先にグラウンド中央に応援旗を持ってきたチーム。
勝者には200点、敗者には50点が与えられます。(結構大きい!)
ルールは以下のとおりです。
・各区間1~3人で(全区間で5~15人で)応援旗を持って、走ってリレーする。
・1人が複数の区間を走る、というのはダメ。(最低でも5人は必要)
・応援旗は、男子生徒1人が持つとかなりいっぱいいっぱいになるくらい重い。
非力な男子や女子なら2人以上で持つのが望ましい。
・応援旗で触れて良いのは持ち手の部分だけで、布部分には触れてはいけない。
・布部分を巻いて運びやすくするのは不可。(つまり、常に風の影響を受ける)
・応援旗は地につけてはいけない。地面に少しでも触れたら50点減点!
※当日のこの時間帯は、晴天なれど強風、旗を持って走るのは結構大変。
コメント欄を活用して、走る順番など作戦を相談していただければと思います。
走者としての参加は必須ではなく、沿道で応援or完走した走者に水やタオルを渡すといったアクションも可能です。
参加者が少なかった場合、以下NPCが登場して人数を補充する可能性があります。
黒猫組:南波 太陽
白猫組:野菜原 ユウ
B.フリー応援タイム
応援旗リレーのあとは、自由参加の応援タイム。
お好きな人数でチームを組み、グラウンドで何かしらのパフォーマンスをします。
パフォーマンスの内容は、エール、チアリーディング、仮装、ダンス、歌、寸劇なんでもありです。
スピーカーなども持ち込んでOKです。
得点は、0点から100点×参加人数。
例えば、
・1人で落語をすると100点満点。
・2人で漫才をすると200点満点。
・3人でコントをすると300点満点。
というようになります。
アクションについては、パフォーマンスの内容だけでなく、
練習風景を回想したりするような心情ロールを入れてもらっても大丈夫です。
というより心情描写を厚くするのは大歓迎です。
審査員は、以下の3名。
相原 まゆ先生……運動技能の評価を担当します。
富士山 権蔵先生……フジコ先生。芸術性の評価をします。
雨宮 草太郎校長……「若者の熱い思い」を評価します。
さらに「どれだけ会場を沸かせたか」といった観点も加えて、合議制で得点が決まります。
つまり、パフォーマンス次第で劇的な逆転もありうることに……!
仮に10人のグループをまとめあげれば……1000点の大博打も可能ッ……!
あとそういえば、「女装っ子は勝利の女神になる」というジンクスが毎年囁かれているとかいないとか……
カオス、もといフリーダムな発想をお待ちしています!