【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～黒猫組サイド｜リアクション

【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～黒猫組サイド

　続いての出し物は白猫組より、夏神零の和の舞台・後半の部だ。
「大事なのは評価ではござらん。見た人の心をどうとらえたか、でござる」
　クールに呟いて、お色直しをした零は静々と舞台に向かう。ずっと純白では変化がないので、見る人を飽きさせないように青みがかった白の袴を選んだ。
「―――拙者は、このあたりに住まう者でござる……」
　まず演ずるのは狂言、滑稽な短めの芝居だ。２，３人の役があるので、１人でも演じられるよう台本にアレンジを加えた。重心を下にし、緩急を自在に使った動きで人間臭い物語を表現する。
　一旦裏に引っ込むと、今度は紫がかった白の衣装で登場。演目は歌舞伎の「勧進帳」。
　あらかじめ渡してあった段取りに従い、放送部の鴻上彰尋が演技前に解説した。
「舞台は平安時代です。源頼朝に追っ手をかけられ、変装して逃げる源義経と武蔵坊弁慶の主従の物語で……」
主君を必死で守ろうとする弁慶の台詞が、朗々とうたわれる。こちらの台本もアレンジ済みである。
　演技中も素早く違う衣装に着替える工夫も取り入れた。裏には白猫組の裏方がスタンバイして、手早く次の衣装を準備している。
　演じ終わった零が静かな動きで退場すると、まもなく喝采が巻き起こる。

　マイクを持ったまゆ先生がコメントした。
「歌舞伎や狂言の独特の動きをマスターするには、厳しい修養が必要です。身体能力的にもポイントは高いですね！」
　続いては、フジコ先生から。
「次々変わる衣装に目が釘付けでした！全部自前なんてすごいわぁ」
　最後にまとめるのは校長だ。
「いろいろな伝統芸能を、高い実力で見せてくれました。今回の得点は86点とします！」
　白猫組初の得点に、観客席が沸く。しかし、カーテンコールで再び出てきた零はすました顔で言った。
「拙者より、スタッフを労ってくれ……」
　そう言うと、零は舞台袖の方を見た。衣装や小物のセッティングに活躍した裏方の、呉井陽太と御鏡聖が、袖から顔を出して笑っていた。

「みんな、ノってるー？！」
　瀬田レオナは、マイクを片手に颯爽とグラウンドに登場した。アイドル兼声優として活動中のレオナの舞台度胸は流石の一言。観客席から喝采が起きる。アイドルの時は指ぬきグローブと赤いマフラーがトレードマーク。銀のロングヘアには、赤い薔薇の髪飾りが付いている。
（絶対負けないよ！）
　楽しむことも大切だけど、黒猫組の勝利のために。チームの皆に、「勝ちたい！」という感情を呼び起こそう。
　レオナはマイクに向かって声を張り上げ、ろっこんを再び発動させた。
「狂想のナイトメア・カーニバル！第69章『応援歌』！！」
　軽快にステップを踏みながら、思いを込めた歌を歌う。
「フレー！フレー！く・ろ・ね・こ！フレー、フレー！黒猫！フレー、フレー！黒猫！絶対勝つぞー！」
　黒猫組の選手たちに、「どうしても勝ちたい」という気持ちがふつふつと沸き上がってくる。
「なんだか、テンション上がってきた……」
「オレもだ、どうしたんだろう。まあいいさ！」
　バックで応援を盛り上げようとスタンバイしていた志波拓郎と奈良橋博美も同じだった。二人はタイミングを見計らって飛び出す。パフォーマンス中の飛び入り参加する場合は得点に関係ないが、そんなことも気にならない。
　持ち前の運動神経を生かし、軽やかにバク転を決める博美。続いては逆立ちしたままジャンプしてみせる。
　拓郎は側転を決めながら観客席の前に移動すると、黒の小旗を持って端から端まで一気に駆け抜ける。それを合図にして綺麗なウェーブができた。レオナの歌声とともに高まる熱気。リレーの興奮も冷めやらぬ拓郎は、思わず大声を出した。
「勝つぞ、黒猫！」

「―――勝利だ！勝利だ！黒猫、ヤー！！」
　レオナは、力強く拳を突き上げて歌を締める。万雷の拍手に、四方を向いて答えるレオナ。
「見事な歌と踊りでした！バックアップ係も良かったです」
　最初に講評したのはまゆ先生だ。
「会場に一体感が出ていましたね！パフォーマンスも安定感があったわ」
　続いてフジコ先生がコメントする。
「熱意のこもった応援歌、感動しました。得点は88点とします！」
　最後に校長が得点を発表する。黒白問わず、観客席から拍手が起きた。