ご利益のある霊験あらたかなアルパカさん｜リアクション

ご利益のある霊験あらたかなアルパカさん

　　【かこめや、かこめ】

　天動記士郎は悩んでいた。
　朝の出来事から「気をつけて運転しよう……」とは思っていたものの、まさか自分に起こりうるとは思っていなかった、光るアルパカことフーちゃんとの遭遇。
　軽やかな足取りで、車道をスキップする様は、確かにとても愛くるしい……が、

　「これで、轢いてしまっては大変ですから……」
　記士郎は一旦車を道路端に寄せて、そっと車から降りて様子を見る。
　すると、それを待っていたかのように。
　車から降りてくる記士郎を、正面を向いて対面するかのごとく、フーちゃんが自然体で待っていた。

　全身は仄かに発光しており、頭部のきらめきはハゲでは出せない威光に繋がっている。
　そんな全身が神々しいアルパカが、記士郎を待ち受けていた。
　後ろの短い尻尾を幸せ一杯に立てながら。

　「………………」

　そして、思わず引きつる記士郎の周りを、距離をつめて、ぐるぐると回り始めた。
　「な、何かの儀式なんですかね……？」
　硬直する記士郎を余所に、どんどん円弧をつめ──そして、ついにアルパカが記士郎の側に満足げに密着した。
　しばし、その間に懐かれているのだとやっと実感すると、心がほんのり温かくなる。

　「外は危険ですから……戻られた方がいいですよ」
　可愛さ半分、緊張半分で表された言葉は思わず敬語。
　それでも記士郎の、アルパカさんとて例外ではない、道端での動物のそそうを車に積んであった箒とちりとりを持ち出し片付ける等、その面倒の見ようはとても心温まる光景だ。
　
　そんな中──ネットで知った撫でればご利益がある……記士郎の頭の中にそんな囁きが。

　「動物にはあまり触れない方が良い気がしますが……」
　しかし、彼は経営的にも切実な雑貨屋をやっている。そんな中で、猫の置物ひとつ、ゴムひもの一本でも売れれば──そう思い「商売繁盛」を祈願した。

　瞬間、フーちゃんに変化が起こった！

＜現在のアルパカさんの神レベル＞

全身発光度：Ｌｖ１→３
神々しさ：Ｌｖ３→４
毛を触った時のご利益度：Ｌｖ２
遭遇時、頭部からの後光：Ｌｖ５→３

　後光が落ち着いたのは、フーちゃんなりの人への配慮かもしれない。しかしそれでも眩しいことには変わり無く。
　更にその分、全身発光度と神々しさが上がって一層目立つようになったのは、考えても仕方が無い事だとしても。

　そしてタイミング的には後光が消える前の光を頼りにやってきたのだろう、最初駅付近に集まっていた存在と、町中を探し回っていた面子が、ついにアルパカを探し出した。