ご利益のある霊験あらたかなアルパカさん｜リアクション

ご利益のある霊験あらたかなアルパカさん

　　【野戦、開始！】

　「この辺りから……」
　八神修は、旧市街の寝子島駅の前から、辺りを観察する。
　高いところから見れれば一番だったのだが、旧市街に上るのが許可されている高い建物というのは家も含めて殆ど無い。

　そして情報といってもフーちゃんの過去二日の足取りは完全にランダムで、明確な場所というのは割り出せなかった。
　目撃箇所に赤い印をつければ、それは綺麗に旧市街一帯を染め上げた。
　それでも最後の賭けとして、修はここ寝子島駅に来たのである。
　手には集めた草を入れた袋と、夜間使用時に使われる双眼鏡を持って。

　その夜間使用に適した双眼鏡も、相手が発光するアルパカとなっては並みの物は使えない。
　急に発生するような光源から目を守る、過露光センサー付きの暗視双眼鏡はそこそこの値段は張ったが、修にとってはアルパカのフーちゃんの安全を確保する為には金額等は既に目に入るものでもない。

　そこに地図を片手にした綾辻綾花がやってきた。修にふとその地図が目に見れば、やはり赤く旧市街の道路を満遍なく埋め尽くされている。
　「ん？　そちらもアルパカのフーを探しに？」
　「はいっ。でも、情報を集めても本当に沢山あり過ぎて……
　この付近が一番町を見回せそうでしたし、旧市街で光っているなら、直接歩いてみよかと思って……！」
　「丁度いい、俺もそうしようか考えていたんだ。一人よりも二人の方が──」

　「ん、ご利益のあるアルパカ探してる？」
　急に茂みにも似たガードレール外で気づかずに休息を取っていた、鹿嶋洋美と劉瑞麗がそっと顔を出す。
　「わっ、人がいたんですね……！」
　綾花が驚きのあまり胸を抑える。
　修がその間に、丁度あたりをつけるよりは人海戦術の方が良いのではないかという話を、途中で息を整えた綾花を挟んで二人に説明を始めた。

　「大勢で行った方が良さそうね……。あれだけ人に発見されているから、人見知りもないだろうし……うん」
　「分かった。夜道はキケン、できるだけ大勢でいた方がいい。
　るいり、がんばる」
　瑞麗が夜半のティータイムから、心機一転。気合を淹れなおしたところで──

　「あっ、あっちです！　光っています──！
　大橋の側……旧市街の、北側です！」
　綾花の声が響き渡った。

　そちらには、隠し切れないほどの光を駄々漏れにしたナニカが──そこに確かに存在していた。　