ご利益のある霊験あらたかなアルパカさん｜リアクション

ご利益のある霊験あらたかなアルパカさん

　　【アルパカ仮面との遭遇】

　待ちに待った夜が来た。

　朝に張り紙を見ていた薄野五月は、夜間の外出は珍しくも「ちょっとそこまで」の一言を残し、部屋からとあるものを用意して家を出た。

　しばらく歩いて、道の真ん中でぴたりと止まる。
　左、右、後ろ、前──と念入りに人の姿が無いか確認して、五月は紙袋からソレを取り出し、じっと見つめる。
　「………………」
　何かの念をこめる様に、見つめたソレを──五月はついに頭に被った！

　「フハハハー！　もっこもこもっふもふです。もっこもこもっふもふです！
　これで、迷子になっているという同胞を救出するのです！！」
　ただ頭部の着ぐるみを被っただけで、該当するアルパカではないというのに、後光が差して見えるのはきっと気のせいだと信じたい。

　いつになくテンションが上がった五月……もといアルパカ仮面は、それでも旧市街のご近所の事を考え、一緒に持ち出した懐中電灯を共に迷惑にならない程度の呼び声でフーちゃん探索に乗り出した。
　「フーちゃ～ん、出てきてくださーい」

　アルパカの話題を昼間過ぎに、ゆるゆるなご当地系ネットニュースで知った神薙焔は、その姿の良く似合うマウンテンバイクに乗って、早速機動力を確保。広範囲を探そうとした矢先の出来事だった。

　彼女は見てしまった。
　アルパカの被り物をした人物が懐中電灯を片手に、地域住民に気を使った優しい声で、アルパカを呼んでいるその姿を。

　「……」
　一瞬の沈黙。焔はアルパカ仮面を見て、しばし頭の中までゆるゆるになるところだった。

　「あれって……というか、アレって……よね？
　……もう、うちのクラスはどうなっているのかしら……」
　アルパカ仮面の素性が割れているのは、もう公然の秘密である。
　声を掛ければ長くなりそうだ。この付近はアルパカ仮面に任せ、焔はもう少し範囲を広げて探索することにした。