ご利益のある霊験あらたかなアルパカさん｜リアクション

ご利益のある霊験あらたかなアルパカさん

　　【未確認アルパカの為の準備】

　「別に……光るアルパカなんて……信用してないし……」

　樋野秀吉は携帯で見た、超神秘現象を扱うローカルネットサイト「ざ・寝子島で見た怪奇現象！！」に朝から目が釘付けになりながら、草むらに座り込んで草をぶちぶち抜いていた。

　そこでもてはやされている噂は、アルパカが光る事はもちろん、その生え始めた柔らかなもふ毛を触ると、何と「ご利益」が得られるのだという。
　昨夜に起こったらしい記事として掲載されていくその事柄に、秀吉は感銘を受けずにはいられなかった。

　「でもＵＭＡとかお化けが正体で、アルパカは見間違いかも……
　やっぱり自分の目で確かめてみたいっス……！」

　──そう心に決めたのは、少し前の出来事。
　実際に、アルパカが光っても困るが、UMAやお化けが正体でも、一般人には困るに違いないであろう中で。
　何故か秀吉が採取していたのは「道端に生えていた草(０円)」というリーズナブルな一品。

　最初は、歩く最中で見てきたネット情報を頼りに。
　その何となく頼りない情報から、まずは動物園へ向かおうとして、それらを頭に纏めた結果。
　いつしか、

　“犯人はアルパカ”
　
　これしかないと無意識に掌を返しての餌調達だった。
　先に動物園を覗いて来て、ポスターには「夜の目撃情報多数」の文字を目にして引き返し、そして夜を控えて、今のうちに餌となりそうな草の採取に勤しんでいるのである。

　「カメラも調達しときたいところっスね……いやっ、手軽に写真に写るなんて思ってないし……！
　でも、ご利益があるなら見つけるだけでも……！」

　込めた期待と気合とで、いつの間にか立っていた足に軽く付いた埃を払う。
　しかし──手に持った「道端に生えていた草(０円)」が、万年空腹かつ、食べるだけのお金もない、欠食青年の秀吉の目には、美味しそうに見えて仕方がない。

　「マヨネーズつけて食べたら美味しそうっスよね……」

　俯き、草を眺めながら、何かにとり付かれたかのように。
　ポツリと呟いた秀吉は、その悪魔のささやきに慌てて頭を振って、夜に向けての草の収集に励むのだった。