チャリンコのお悩み、解決します｜リアクション

チャリンコのお悩み、解決します

「乗るとしたら、クロスバイクがいいかな」
　御剣刀は、店内に並ぶ自転車を眺めながら呟く。自転車といってもこんなに種類があるとは知らなかった。
「通学でしたら、クロスバイクで十分用は足りますね」
　擦り切れたチェーンを交換しながら、二輪悟は刀に声をかける。
「なるほど、でもカバンがあるからかごも欲しいんです」
「別売りのかごをつけられるタイプもありますよ。どんな用途で乗りますか？」
　作業中は悪いかな、とも思ったが、せっかく聞いてくれたのだから相談に乗ってもらおう。刀は言葉を続けた。
「基本は通学とか、島の中だけで使うと思います。でも、体を鍛えるために遠出することもあると思います」
「なるほど。街乗りだけならシティサイクルで十分ですけどね。簡単に言うと、舗装道路を念頭においたロードバイクと、悪路でも走れるMTBがあって、その間の子がクロスバイクなんです」
「へえ……。そんなに種類があるんですね」
「ええ、でもいずれにせよかごや、後ろのスタンドは便利だからつけたほうがいいですよ」
「スタンド、ですか……」
　刀は、ふと親しくしている女の子を後ろに乗せて走っている自分を思い浮かべた。
「お客さん、どうしました？」
「いえ、何でもないです」
　刀は急いで不自然な沈黙をごまかす。落ち着け俺、二人乗りはいけないぞ。
「でも、いろいろ考えてるとバイクもいいな、と思えてきました」
「はは、そこら辺はご自由ですからね。自転車のことだったら、いつでも相談に乗りますよ」
「ありがとうございます」
　悟に礼を言いながら、バイクを買うならもっとお金を貯めよう、と刀は思った。

「おにいちゃんの自転車、おっきい荷台付いてるねー」
　店内の自転車を見て回っていた野坂庵は、志波武道に話しかけた。
「うん、米屋さんの仕事で使うからねー！」
「これ乗ってどこまで行くの？」
「そりゃもう、お仕事だからお得意さんのとこ全部、島のどこでも行くヨ！」
　武道がおどけて答えると、庵は目を丸くする。
「へぇー、いおりね、カラスが鳴いたら帰らないといけないから、あまり遠くに行けないんだよねー」
「誕生日プレゼントに買ってもらったらいーんじゃない？」
「でも、いおりの誕生日８月だから、もうすぎちゃったの！」
「じゃ次の誕生日だな！」
「さっきはそう思ったけど、それまで待てなーい！」
「じゃ、今度のクリスマスだネ！」
　二人が話している途中で、武道の自転車のパンクはちょうど直った。
「アンガトゴザイヤ～ス！それじゃ、兄ちゃん店に戻らないといけないから。いい子にして、自転車買ってもらうんだゾ～」
「わかった、いおりいい子にするー！」
　庵は、自転車にまたがる武道に向かって手を振った。

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