チャリンコのお悩み、解決します｜リアクション

チャリンコのお悩み、解決します

　雨崎荒太郎は、買ったばかりの自転車を店先まで出し、早速またがって軽く漕いでみた。
「お、やっぱりいい自転車は軽くていいねえ～」
「新しい自転車、買ったんですか？」
　話しかけてきたのは、修理された自転車を受け取り、支払いも済ませて出てきた宮祀智瑜だ。
「うん、ちょっと奮発していいのをね～」
「私も、さっき新しい自転車が欲しいって話してたんです」
「へぇ～。新しいのを買うなら、ここの自転車屋がいいよー。店主さん親切に教えてくれるし」
「そうですね……でも、今乗り心地を確かめたら、慣れてる自転車が一番かな、とも思うんです」
　智瑜は微笑んで、「宮祀青果店」の名前入りの自転車に乗って去っていった。整備された自転車の乗り心地がよほどいいのだろう、機嫌よく鼻歌を歌いながら。

　荒太郎の方は、商店街を抜け、試運転のために海沿いの車道に出ていった。通行料の少ない道を、思い切りペダルを漕いで走り抜ける。
「ひゃっほー！今まで乗ったどの自転車よりも漕ぎやすい～」
　潮の匂いのする風が、荒太郎の頬をなでた。
「おっ」
　自転車を走らせる彼の目に入ったのは、水平線の向こうに沈みかかった夕日だった。荒太郎は、ちょうど海を見渡せる踏切前で停車した。静かな海が、夕焼けの色を綺麗に写していた。
「きれいだなぁ……これなら、寄り道する甲斐あるかもー！」
　荒太郎は、夕日がすっかり沈むまで、海と空を眺めていた。これからは、恋人と二人乗りして、遠回りして帰るのもいいな。また一つ、いい思い出が作れそうだ。荒太郎は、満ち足りた気分で帰途についた。

『CutBiCycle』が無事閉店したその晩、柚瀬玲音は自室でいつもの習慣である日記をつけていた。たまにサボる時があるが、楽しかった今日はきちんとつける。
「きょうは、お父さんとお母さんがおでかけだったので、さとるお兄ちゃんと二人でみせばんをしました。きょうはいつもよりおきゃくさんがおおいきがして、たいへんでした。でも、がんばってさとるお兄ちゃんのてつだいをしました。
　いおりお姉ちゃんやしんのすけお兄ちゃんときょうそうしたり、おみせのおきゃくさんとおしゃべりもして、いそがしいけれどたのしい一日でした。いろんなひととおはなしができてよかったです。
　おみせもたいへんなのに、お父さんもお母さんもべつのようじがあるなんて、おとなってたいへんだな、と思いました」
　日記をつけ終えた玲音は、思い切り伸びをすると、疲れた体を寝床に横たえた。すぐ、穏やかな寝息が聞こえてきた。幸せそうな寝顔の玲音は、きっと自転車屋での楽しい一日を夢に見ているのだろう。

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あとがき

担当マスター：三城俊一
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皆様、今回もご参加ありがとうございました。

ある自転車屋での一日、いかがでしたでしょうか？ささやかな日常の一ページになれば幸いです。
当方、自転車は乗るものの意外と知らないことも多く、勉強になったリアクション執筆でした。描写に至らない点がありましたらご容赦の程を……
あと、二輪悟くんのネーミングセンスにはツッコミはいれないお約束で！

では、またのご参加、お待ちしております。

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