９月の★ハッピーバースデイ｜リアクション

９月の★ハッピーバースデイ

●９月30日　篠原翠響の誕生日●

【寝子島中学校：２年４組の教室】

「みゆら来たー！　お誕生日おめでとー！」
　教室のドアを開けるなり、駆け寄ってきた女の子達に、そう声を掛けられて。
「あれ、誰の誕生日？」
　篠原翠響は大きな目をぱちくりさせて、とりあえずそう惚けてみるけれど、
「えーなに言ってるの、みゆらの誕生日だよ」
「そうやってとぼけるコには、プレゼントあげないからねー？」
　普段から仲の良い子たちなので、そんな彼女の演技もとっくにバレバレだ。目の前でうりうりと可愛らしい包みを見せられれば、すぐに翠響だって降参せざるをえない。
「ふふふ、そう。あたし、今日で１４歳なんだ」
　ハッピーバースデイだって早々に認めて、みんなからお祝いのプレゼントを貰う。中身はクッキーや文具、それにリボンやシュシュなど、中学生のお小遣いで買える範囲の物だったけど、翠響にはどの贈り物も、素直に嬉しい。
「みんな、ありがと」
　ポニーテールのリボンをさっそく水玉のシュシュに付け替えてみれば、いつもはつまらない授業だって、ちょっぴり背すじが伸びてウキウキ気分。クラスの男子にも「可愛いじゃん」って褒められれば、ちっとも悪い気はしない。

　放課後は、朝プレゼントに貰ったクッキーをハンカチに載せて分け合い、友達と教室でおしゃべりをして楽しく過ごす。
　他愛ない冗談に机を叩いて笑い転げたり、男の子の噂話などをしていれば、時間の過ぎ去るのもあっと言う間だ。いつの間にか日も傾き、夕暮れの長い影が伸びてきた教室の中で、翠響はふと思う。
（こんなふうにきっとあっという間に１４歳の頃も終わって、
　来年にはあたしはもう、１５歳になってるんだな）
　楽しい時間が過ぎ去るのは、すごく早い。
　でも１４歳でいられるのは、人生でたった一度きり。
　子供というには微妙で、かといって大人になったとは言い切れないこの年齢。
　どうにも気持ちの上でもおさまりが付かないというか、宙ぶらりんと言うか、そんな気分だったけど、
（……なんて、そんな難しいことを考えるのは、これぐらいにしとこう）
　すぐに翠響は頭を切り替え、また友達とのおしゃべりの輪に戻る。
（今日はあたしの誕生日、とにかく今はそれを思い切り楽しもうっと！）

　◇

「ただいまー」
　友達と別れてシーサイドタウンのマンションに帰宅し、ふとダイニングのテーブルを覗けば、そこには箱のままのバースデイケーキが載っていて、俄然テンションが上がる。
「やった、あたしの好きなケーキ屋さんのだ！」
　母親がキッチンから顔を覗かせ、今日は翠響の好きなものばかりを作ったと教えてくれる。じきに父親もいつもより早く帰宅してくれて、３人で明るい食卓を囲んだ。
「それで今日はね、……」
　友達とどんなふうに過ごしたか、どんなプレゼントを貰ったかを事細かに両親に報告しながら、翠響の１４歳の誕生日は、こうして平穏に過ぎていく。

　お誕生日をむかえた全ての人に、

　Buona fortuna──幸運と、祝福を。

『９月の★ハッピーバースデイ』　おしまい

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あとがき

担当マスター：鈴木二文字
ファンレターはマスターページから！

　
　誕生日シナリオを担当させていただくのは、これで２回目ですが、
　今回も皆さんのアクションに助けられました。

　ＰＣさんの成長や、キャラの関係性の「ひとつの節目」として
　お寄せいただいたアクションが多く、
　個人的にも感慨深い内容になったな、と感じています。

　それぞれの１日が、良い思い出となりますことを。
　また寝子島のどこかでお会いしましょう。鈴木二文字でした。
　

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