【体育祭】七色のパン食い競争　黒猫組サイド｜リアクション

【体育祭】七色のパン食い競争　黒猫組サイド

【跳躍する者達(1)】

「さあ、いよいよパン食い競争も大詰めだぜぇっ！　最初にパンを手にするのは誰だぁっ！」
　サンマさんがクールに熱くシャウトを決めて、競技の場を盛り上げます。

「……一位は俺だっ！」
　最初に飛び上がったのは序盤から高順位をキープしていた御剣刀くんでした。
　もともと食べることが大好きな彼ですが、美味しい絞りたて牛乳の影響もあり、あんパンへの熱い想いは限界突破状態です。
　神魂絡みの事件と剣術の稽古とで鍛えた足腰を使って力強く跳躍した刀くん。
（――取った！）
　ぱくりっ、となんなくパンを咥えると、刀くんはそれを手に取ってまずは一口。
「うん、美味い！」
　ぎっしりと詰まった餡子の甘味に舌鼓を打ち、
「よし、サンマさん。残った牛乳をくれ！」
　それから残った牛乳を実行委員(in　サンマさん)から受け取って、彼方のゴールを見つめます。
（あとは最後まで駆け抜けるだけだ！）

　二番手に挑むのは鴇波羽衣さん。
　羽衣さんは目を閉じ、胸に手を当てて、
（……大丈夫。いつものように、自分を信じて――）
　自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、きっと目を見開いて助走をはじめます。
　そして、大地を蹴ってジャンプ。
　風を感じ、風を纏い、風と一体になって。
（――やった！）
　ふわりと舞い上がるように飛翔した羽衣さんはパンを口でキャッチすると、そのまま宙でくるりと一回転、猫のように華麗に着地します。

『おおっ……！』

　まるで別の競技であるかのような美しい跳躍に盛り上がる応援席。
　パチパチとまだ競技が終わってもいないのに拍手まで起こって、羽衣さんは「えへへ……」と照れたように髪をかきます。
「お嬢ちゃん、グッッッドなジャンプだったぜぇ。でも、まだ競技は終わってないんだぜぇ？」
「……そうだった。せっかく応援してくれた人達のためにも、チームのみんなのためにも、頑張らなきゃ！」
　はたと我に返ったように羽衣さんはパンを片手にゴールを目指して、駆け出します。

「（色を除けば）見た目は普通ね……。何気にカオスを呼ぶものや、あからさまな香辛料の匂いのするものもありますけど……」
　よくもまあこれだけわけのわからないものを集めたものだと呆れ半分感心半分に呟きつつ、ティナ・フォルトゥスさんは自分のコースにある紫色のあんパンを正面に見据えます。
（あたしのところはノーマルで助かったわ）
　もともと上背があり、身体能力も高いティナさん。
　悠々と跳躍してパンをキャッチし、その味を確かめます。
「……本当に何の変哲もないあんパンですのね。ちょっとつまらないですわ……」
　幸か不幸か、あたり（？）を引いてしまった運命を呪いつつ、ティナさんはゴールを目指してダッシュします。
「まあ、カロリー云々ですけど、どうせ今日は体育祭。この位、どうってことはありませんわ」

「あ、これさつまいも蒸しパンだー！！」
　自ら長身を活かして、１ｍほど下げた紫色のパンをなんなくゲットした羽生碧南さんは素材の甘さを引き出したパンの美味しさに瞳を輝かせました。
「この甘さが牛乳とあうのよねー」
　おいしいあたりパンに満面の笑みを浮かべつつ、碧南さんもまたゴールに向かって走り出します。

　その頃、桜崎巴さんは――。

「ンモォォォォーーーーーーッ！！！」

「くぅっ……！　どれだけしつこい牛だよっ！？　これじゃあいつまで経ってもゴールできないじゃないかいっ……！」

　いまだその猛追を続けるモーさんから必死の逃走を続けていました。