コズミック焼きそばパンをこの手に！｜リアクション

コズミック焼きそばパンをこの手に！

　沼田さん騒動に紛れて脇道にそれた男がもう一人。
　彼は、トランポリンを前に立ち尽くしていた。

（……八十八旗か？）

　猛烈なデジャヴの嵐に、彼は襲われていた。
　授業終了後、跳ね起きてダッシュ。その後何かあって、廊下のつるつるに巻き込まれた。
　そして彼は、トランポリンの前にいる。

「飛んで抜け駆けするつもりか？」

　その時、渡り廊下方面から、ふわりと酒精を含んだ風が匂った。
　ろっこんを知らぬ朝陽。しかし、ハッピーラッキーにブーストされた酩酊の力は、容赦なく朝陽の心理に影響を及ぼした。
　あんまり朝陽君が、お酒に強いとも思われない。

　力強い万能感、高揚が、朝陽の胸に湧いた。

（おい、八十八旗。
　普段女子とチャラチャラ遊んでるお前が、俺に勝てると思ってるのか？）

　日頃、鍛錬を積んでいる俺に！

　２階の窓は全て閉ざされている。
　一つをのぞいて。
　まるで「此処に入れるものなら入ってみろ」と、誘われているようだった。

　聖なる武器は、ふさわしき者の手元に収まるという。
　ということは、朝陽はまぎれもなく、トランポリンに選ばれし勇者。

　十分な助走をつけ、朝陽はトランポリンに飛び乗る。

「これが！
　日々厳しい特訓と、さらに自主練で鍛え抜かれた跳躍力だ！」

　見るがいい、八十八旗！
　サッカー部はあらゆるポジションに対応できなければならない。
　審判、ファン、そしてボール！

　八十八旗よりも高く飛んで、近道してやるぜ！

「どりゃああああ！！！」

　ぼーん。
　完璧な放物線を描いて、朝陽は２階の窓に吸い込まれた。

　……何かすごく間違ったことをしたのかもしれない。
　ちょっと、後悔した。