コズミック焼きそばパンをこの手に！｜リアクション

コズミック焼きそばパンをこの手に！

　酒と！
　涙と！
　天国と！
　地獄！

　渡り廊下は狂乱の巷と化していた。
　朱蘭と璃亜を中心として、酔っ払いと化した生徒たちが、わめいてはしゃいで乱闘し、仕掛けそこなったトラップを乱れうちして、壮絶なカオス状態を作り出していた。

　朱蘭のろっこん水を、璃亜は猛スピードで開けていく。
　ほのかに上気した頬。ほつれた髪が日本人形のような顔にかかり、くずれた学生服が体の線をあらわにする。
　次から次へ干していく。
　不幸そうな風情と相まって、その有様は単に酒が強いというより、何かのアディクト（中毒）を思い起こさせた。キッチンドランカー。
　彼女の周囲では、あずかり知らぬところで、ろっこんが起動している。

　璃亜のろっこん『運命の輪』！
　一定範囲内の自分以外の人たちを幸福にし、自分は不幸になる！
　その発動条件は『一定範囲内の、自分を含む誰かが不幸な目に遭う』。
　ただでさえ強力なブースト能力を持ったこのろっこんが、朱蘭のろっこんと合わさることにより、何が起こるのか。

①朱蘭のろっこんを受け取り、宴会に巻き込まれる。
②巻き込まれたことが不幸なら、『運命の輪』が発動する。
③朱蘭はより幸せになり、宴会が大規模になる。
④①に戻る。

　驚異の無限コンボ！

　さらに璃亜は見ての通り酒を飲むほど不幸になり、参加者がいなくてもコンボは発動する。

　というわけで……。
　いまや風紀委員も巻き込んだハッピーラッキー宴会は、一大ページェントと化し、加速度的に膨れ上がっていたのだ！
　さらにその酒浸りムードは校舎全体に押し寄せ、無関係な者まで巻き込もうとしていた。

　傍らで倒れるのは勘三郎。
　すきっ腹にいきなりアルコールをぶち込まれ、あえなくダウン。
「は、腹が減って……走れねえ……」夢とうつつの境で、彼は喘ぐように呟く。「くそう……負ける……もんか……」
　その顔に、猫がムギュッと乗っかり、勘三郎の意識を跳ね飛ばした。

　彼らを見つつ、ため息を吐くのは十一。
　玉ねぎを拾い上げ、それを素早く解体する。
　どこからか持ち込まれた醤油をかければ、オニオンサラダの完成である。
　納農園の玉ねぎは、新鮮でさっぱり、苦みもなくて生でもいける。
　お酒のつまみには、うってつけなのだ。

　十一は悩んでいた。
　前回に引き続き、今回は宴会騒ぎだ。
　いくら生徒会役員がいるとはいえ、怪我人が出る可能性だってある。
　自分の玉ねぎで、怪我人が出てしまうのは、ちょっと忍びない気もする。

　なんかうまい方法はないかな……。
「何か……」いいことを思いつきそうな気がする。
　
　その様子を見守る、八神修。
　パチリと宴会の様子を写真に収め、ため息を漏らす。

　彼の胸の内にある思いは何か？