コズミック焼きそばパンをこの手に！｜リアクション

コズミック焼きそばパンをこの手に！

　瞳を閉じると、風景やノイズが遠ざかっていく。
　聞こえるのは、自分の息遣いと、心音だけ。

（実地確認と、イメトレ大事なのだ……）

　後木真央は、数分後の自分の姿を、緻密に思い描く。
　歓喜に溢れ、絶叫している。
　その手には、今日の特別メニュー限定一個の惣菜パン『コズミック焼きそばパン』。

　超高級食材を使用したパンを巡って、昼休みに激戦が繰り広げられようとしている。
　真央はその戦いに参戦すべく、緻密に策を練って、準備をしておいた。

（窓から飛び出し斜めに北校舎入口、そして駆け上がって購入……。
　ただし、障害物競争なので、身を低く保って人避けつつ走り抜け……なのだ）

　普段の、おネコさまを集めての早朝猫集会は早めに切り上げた。
　最短距離は確認した。
　一限目終了時に、学校ジャージに着替えた。
　二限目終了時に、掃除用具を中庭に隠した。
　三限目終了時に、最後のしあげを施した。
　教室の窓の鍵も開けておいた。
　ジャージの財布をたしかめ、シューズの靴ひもをキュッと締めた。

　闇の中に、慣れ親しんだイメージが再生される。
　スキのない、完璧なモーション。後は実行するだけだ。
　あと少しで……授業が終わる。

　もちろんまだ授業中である。
　目をつぶって完全に没頭している真央に、教師は声をかけようとするが、あまりに鬼気迫っており、黙り込むしかない。

　その時！
　チャイムが鳴り響いた！

　真央は弾かれたように飛び出し、窓から跳躍する！

　焼きそばパン争奪戦第二幕、勝つのは誰だ？

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