コズミック焼きそばパンをこの手に！｜リアクション

コズミック焼きそばパンをこの手に！

　先ほど猫にじゃれつかれていた鴉。
　勘三郎である。

　なぜ、彼がここにいるのか。
　あらまし、経緯を説明しよう。

　まず勘三郎は、かなりいいところまで行っていた。
　信彦の策が発動した時点で、一番焼きそばパンに近かったのは、彼だったのだ。

　チャイムが鳴って勘三郎は、植木のそばのビニールシートに走り込んだ。
　全身に気迫をみなぎらせる。
　鋭い絶叫が、勘三郎の喉から放たれた。

　ズグン！
　肩甲骨が盛り上がり、翼のシルエットが浮かぶ。
　全身が黒く染め上げられる。
　勝利を確信した笑いを、彼は笑う。

　勘三郎のろっこん『腹ペコガラス』
　嘴太鴉へと変身させる。

　信彦によって封鎖された寝子島。
　だが、彼にも手の届かない場所があった。
　天空！
　全ての窓は封鎖できても、鴉が身をよじる間隙くらいはある。最悪、エアダクトからでも侵入は可能。

　勘三郎は翼なきもの、全ての間隙をついて、一番に購買部へ至る！

　曇天をよぎって飛ぶ、一羽の漆黒の鴉！
　
　ざっと音高く翼を広げ、空へと……。

　おかしい。なんか力が入らない。

（……しまった！！）
　勘三郎は歯噛みをした。
　完璧な計画。しかし盲点があった。

　飛行中は、六倍の速度で腹が減る。

　お昼時で、限界まで腹が減っていた彼。急な変身で、いきなり腹ペコゲージはゼロに突入した。
　世界が回転する。体が気流にもまれ、力が抜けていく。

「くそう、負けるもんカー……」

　ずるずると高度を落とし、彼が墜落したのは、渡り廊下の茂み。
　丁度サオラに変じたシダの、至近距離だ。
　
　そのまま争奪戦が終わるまで、茂みにいられれば、よかったであろう。

　だが、彼の姿を見つけるものがいた。

　勘三郎は、なぜか猫に好かれる。
　彼自身は幼少時のトラウマ故、猫が全く駄目なのだが、なぜか猫に好かれるのだ。

　突如、躰を掴む力を感じた。
　間近にあったのは、見たこともないようなでぶ猫。
　さも嬉しそうに笑った。

　後の経緯はご承知の通りである。