フリマっ！｜リアクション

フリマっ！

「このカードは売り物？」
　椎名あさひのブースを訪ねたのは佐藤英二でした。
「あ、はい！　いらっしゃいませー。手に取って見てって下さいねー」
　あさひは元気よく返事します。いま、お母さんは他のブースを見に行っているので、接客はあさひの担当となっていました。
　彼が手にしたのは、グリーティングカードを入れたスクラップブックでした。
　あさひはドキドキ、胸を高鳴らせながら英二を見守ります。
　買ってもらえるかな？
　どのカードもこの夏、あさひがデジカメで撮影した写真を加工した図柄でした。どの写真についても、撮影したときのことを覚えています。どれも大切な思い出です。
　やがて、
「この鳥、綺麗だね。もらえるかな？」
　そう言って彼は、野鳥を撮影したカードを手にしたのです。
「ありがとうございます！」
　嬉しくってつい、あさひは声を上げていました。
「この写真、あさひが撮影したんだよ！」
「本当に？　上手だね」
　とこたえた彼の、笑顔がとてもまぶしくて、つい彼女は
「一緒に記念撮影、してもらっていい？　実は今日、一番最初に売れたカードなの！」
　と言ってしまいました。
「喜んで」

「ここ押せばいいデスカ？　はい笑って、オーケー、いい感じデス」
　あさひに頼まれて、英二との写真を撮影したのはミルティアリ・ブリアードです。
「ありがとう」
「なんのこれしき朝飯前、デスヨ」
　あさひにデジカメを返してミルティアリは振り向きます。
「昴、待たせマシタネ。行きまショウ」
「いや、待ったというほどじゃないよ。ミルは親切だな」
　篠木昴は顔がほころぶのを覚えました。
　この日、彼はミルティを誘って会場を訪れていたのです。今朝、たまたま彼女をみかけた彼は、一人でフラフラするよりは、と声をかけたところ、彼女は二つ返事でついてきました。
　大柄な昴とコンパクトなミルティにはかなりの身長差がありますがふたりは同級生、転校してきたばかりの彼女を、彼が案内するという格好です。
　案内されるといってもミルティは、大人しくなんてしていません。
「なんだか色んな商品が並んでいて賑やかデスネ……！」
　会場を進むたび目を輝かせては、野原に出した小犬みたいに駆け回るのです。
　古着を見つけると飛んでいき、オモチャにも激しく興味を示します。それでもとりわけアクセサリー類、なかでも髪飾りやネックレスには素早く反応するのでした。
「この時期に転校してきてしかも猫鳴館に来るだけあってパワフルだよな」
「パワフルすぎマスカ？」
「いや、むしろ見てるとこっちも元気になりそうだ」
　とは言いつつも昴は内心、彼女が転ばないか心配していたりするのです。
　まあ高校生だし大丈夫……かな。

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