遠足！　小学生、横浜へ｜リアクション

遠足！　小学生、横浜へ

◎猫菱みなとみらい技術館

　４班の野坂庵、鬼崎未月、八葉あいら、柚瀬玲音は猫菱みなとみらい技術館にやってきた。
「この日をすごく楽しみにしてたんだ」
　クールな口調ながら、２年生のあいらは内心は思いっきりはしゃいでいた。
「みたことないのがいっぱい！　たのしそう！」
　１年生の玲音も駆け出したくてうずうずしている。
　班長である５年生の庵は、班員の行きたいところを聞いて予定を立てている。
「それじゃまず海洋から行くよ～、はぐれないでね！」
　班長の役割は真面目にはたすつもりだが、もちろん楽しむことは忘れない。
「おおお、すごいなー……どこを見てもなんかハイテクだぞ。まるでアニメやゲームの世界からそのまま飛び出して来たみたいに……ううん、アニメよりずっとかっこいいぞ」
　調査艇や宇宙船に目を奪われ、きょろきょろするあいら。
「あははっ変な形ー！」
「わあー！」
　庵は深海の生物に興味津々、有人潜水調査船を操作する。
　神秘的な景色に心奪われきょろきょろしていたが。
「いおりおねーちゃん、あれ！　すごいよ」
　玲音の指さすほうを向いた庵の目の前に、不気味な魚が迫ってきてぎょっとする。
「こ、こんな魚もいるんだね、はは」
　上級生の余裕を見せようとするが、涙目になっている庵。
「こんなに遠くて暗くて不安になるとこでも生き物って居るんだ」
　深海の説明を息を飲んで聞いていると、自分が小さく感じつつも見たい知りたいと好奇心が芽生えたり、冒険心が湧いてくる。
「むっふふ～ちょっとべんきょ好きになったかも」
「すごいな……」
　そんな庵に、未月は視線を向ける。
（ちょっとあいらちゃん以外とはまだうまく会話できないけど、せっかく同じ班なんだからもうちょっと仲良くなってもいいかな……）

　赤銅スフィアも技術館にやってきていた。
（ママ……パパ……）
　スフィアの母と父の職場は研究機関だ。
　詳しい仕事の内容はまだ良く分からないけど、仕事を頑張っている母や父の姿は自分の誇りでもあったし支えでもあった。
　寝子島への引越しが決まる前は、母や父が休みの日よく地元の博物館や美術館に連れて行ってくれたものだ。
　技術館の事を調べてみて父や母と同じような仕事をしている姿を見られるのはいいかな、と思いこれだけは楽しみにしていた。
　夕鈴翼も気の向くままに技術館見学を選んだ。各展示をじっくりゆっくり体験している。

「のりものの動きたいけん！」
　技術探検ゾーンで、玲音が声を上げた。
「てこ？　かっしゃ？　組み合わせると手でさわらなくても遠くのがうごくの？」
「わかる？　玲音」
　庵の問いに。
「……今のボクにはちょっとむずかしい！　でも、遠くでが～ってなってごーってもちあげたりできるの、すごいね！
　自転車にも似たかんじのモノがはいってたりするんだって、おとーさんがこないだゆってた！　とってもつよいってことだね！」　
「そうだね。あ、あっちでヘリコプターの操縦ができるみたいだよ」
「ほんと！　やりたい！　うんとスピードだしたいな！」
　玲音が走り出す。
「よし、あたしも負けないぞ」
　あいらが言い、未月もその後を追う。

「……」
　その操縦体験シミュレーターの傍で、ソフィアは黙って眺めていた。
「乗りたいんですか？　乗りましょうよ」
　後ろからかけられた声に振り向くと、翼がいた。
「折角ですからね、色々と楽しまなきゃ損ですよ」
　そう言って翼は笑顔を見せる。
「……うん」
　なんだかドキドキして、ソフィアは頷いていた。
　そのドキドキは、決して嫌なものではなかった。