遠足！　小学生、横浜へ｜リアクション

遠足！　小学生、横浜へ

◎お弁当タイム！　と見つかった迷子

　ひととおり回って、一休み！　お弁当の時間となった。
「今日は家政婦のかたとお祖母さまが二人で美味しいお弁当を作ってくれました」
　逢莉がお弁当を広げる。
「おにぎりと煮物だったりお魚だったり、なんだか和風です！　なんてゆかしいお弁当！」
「今日のお弁当は、おにぎりとから揚げとたこさんウィンナー！　かーちゃん色々作ってくれてるなー」
　勝治郎もわくわくとお弁当を開く。
「どれかおかず交換しよーぜっ。おれからはひじきの煮物とか、ひじきとか、ひじき……」
「なんかひじきばっかりですね？　ウインナーをください」
　首を傾げた逢莉が言うと。
「そっか……ばれてしまってはしょうがない！　おれひじき嫌いなんだけどさ、みんなの前で食べないわけにはいかないよなぁ」
　ウィンナーを逢莉に渡し、勝治郎が言う。
「見とけよ！　全部食べるからなっ！　あ、その魚くれよ」
　ひじきをかきこみつつ、逢莉の魚をもらう勝治郎だった。
「みんなのお弁当どんなの？　おかずの交換とかしない？」
　そこへやってきた濫丸が、逢莉や勝治郎のお弁当を覗き込む。
「僕のお母さんの作ったハンバーグも卵焼きもすっごく美味しいんだよ」
「うまそう、ひじき以外だったらほしい」
　そう言う勝治郎に濫丸が笑顔を向ける。
「僕もにんじん以外ならほしい！　あ、から揚げもらっていい？」
　やまと丸方面から道も合流していた。
「そちらのお姉さんも、ご一緒にいかがですか？」
　逢莉が道に声をかけた。
「あ……それじゃ、お邪魔するね」
　道が隣でお弁当を広げる。
　お母さんの手作り弁当は、卵焼きやから揚げ、ハンバーグなど子どもが好きそうなおかずがいっぱいだ。
「美味しそうですね！」　
「よかったら食べない？」
「いいんですか？　それじゃハンバーグと煮物を交換していただけませんか」
「どうぞ。そっちもおいしそうね。それじゃ、いただきます」
　下級生相手とはいえ、溶け込めてよかったと内心ほっとした道だが、余裕の笑みを崩さなかった。
　
　みんなで楽しくお弁当を食べた後、濫丸がガムを取り出す。
「おやつは風船ガムを持ってきたよ、僕これ大きく膨らませるの得意なんだ」
　ちょっと見せびらかす感じで膨らませて見せる。
　ぷううっ……
「まあ、とってもお上手ですね！私もやってみようかしら？」
　はしゃぐ逢莉に、班員の子が尋ねる。
「さっきからはしゃいで疲れないのか？」
「あら、そんなのぜんぜんへっちゃらですよ！　まだまだ愉快活発にいけます！　さあ、おなかいっぱい食べたら午後が楽しみです！」
「なあみんな、おやつと言ったらなめこの山だよな！？」
　隣では葉月が力説している。
「は、はあ……そうっすか」
　隣でたじたじとなる一心であった。

　ニャンドマークタワーに入る前に迷子になった椎名あさひは、皆を探しつかれて赤レンガ倉庫の近くに座っていた。
　さっきは楽しかったはずの景色が、今は知らない人ばかりで拒否されている気分になる。
「あさひちゃん！」
「椎名さん、ここにいたの？」
「みんな！　先生！」
　やっと、やっと会えた……
　先生や友達に声をかけられ、ぽろぽろ涙がこぼれる。
「よかったわ、心配してたのよ」
「せっかくの遠足なのに、心配かけてごめんなさい」
「はぐれないよう気をつけてね。午後の見学が始まるから、一緒に行きましょう」
（せっかくのおべんとう、食べそびれちゃったなぁ……）
　お腹はすいたけど、さっきは目に入らなかった景色がなんだか輝いて、暖かく見える。
　心って、気持ちって不思議だな、とあさひは思う。気持ち一つで景色の見え方がまるで変わってしまう。
「みんなといっしょに帰れてよかったー」