遠足！　小学生、横浜へ｜リアクション

遠足！　小学生、横浜へ

◎全体行動～ニャンドマークタワー

　椎名あさひは、カメラが大好きな３年生だ。
　だからもちろん、遠足でも写真をいっぱい撮りたかったのだが。
「学校にはカメラは持って行かないこと。お父さんお母さんとお約束したよね？」
「でも……」
「遠足だからってそれはかわらないよ」
　朝からそう言われて、楽しみだった遠足もちょっぴりザンネンになってしまった。

「でも、おかあさんがおべんとうにねこさんおにぎり入れてくれたからお昼が楽しみだよー」
　気を取り直してみんなと一緒に横浜を回りながら、つい、カメラがあったらなと思ってしまう。
「赤いレンガのそうこはなんだかちがう国にきたみたい！」
　レンガ造りの倉庫が並んでいるだけだが、その雰囲気がとてもよい。中ではお店もやっているようだ。　
「ニャンドマークタワーはおっきいねぇ……」
（あの上からけしき撮ったらどんな写真が撮れたかなぁ……こっそり持ってきちゃえばよかったかなぁ……）
　しかし。そんなことを考えているうちに。
「……あれ？　みんながいないよぉ！？　どこ行っちゃったのー？」
　タワー近くの人混みの中で、あさひはみんなを見失ってしまった。
「あさひが”おやくそく”やぶっちゃえばよかったなんて考えたからバチがあたっちゃったの？」
　泣くまいと思っても、じわっと目に涙が浮かぶ。
「先生、みんな、どこ？　まってまって、おやくそくはちゃんと守るから、みんなといっしょがいいよぅ……」
　うろうろ歩き回っても、遠足の小学生らしい姿は見つからなかった。
　時間ばかりが過ぎていく……

「ニャンドマークタワーは一度のぼってみたかったんだ！」
　全体行動を選んだ濫丸は、皆とニャンドマークタワーに上っていた。
「うっひょー、すごい眺め！　もしかして寝子島見えるんじゃないかな？」
　きゃっきゃとはしゃぎながら、周りの皆に目を向ける。
（あれ？　あの子）
　バスで濫丸と一緒だった姫は、高いところは苦手なので窓からは離れていた。
「寝子島見えるかな？」
　きょろきょろしている姫の後ろから、いたずら心が湧いた濫丸がそっと近づく。
「わっ！」
　脅かしながら、窓に向かって背中を押した。
「きゃあっ！」
　姫の悲鳴に、ニヤニヤしながら濫丸が謝る。
「ゴメンね、怖かった？」
　笑って済ませられる程度に……のつもりだったが、年下の子相手なので、笑って済ませてくれるかどうかちょっとドキドキした。
「あー、ひどいです！　下を見なければ大丈夫……だと思いますけど。写真は撮りたいです」
　怒ってみせる姫だが、すぐに笑顔に変わった。
　窓に近づいた姫はケータイで景色を撮り、母親あてにメールする。
「お土産は何にしようかな？　タワーのストラップにしようかな」
　ストラップの中には、ニャンドマークタワーのマスコットの猫もあった。
「うちのくろとしろに似てるかも」
　姫は２匹の飼い猫を思い出しながら微笑んだ。

「さすがに愛知までは見えないよね」
　やまと丸から移動してきた道は、遠くの景色を見つめた。
　それから、やまと丸の白い帆に目を転じた。
　さっきの男の子は、どのへんでお弁当を食べているだろうか。