遠足！　小学生、横浜へ｜リアクション

遠足！　小学生、横浜へ

◎明日は遠足！　だけど……

　遠足の前日。寝子小の子供たちは皆明日の遠足を楽しみにしていた。
　いや、一部の子を除いて、かもしれない。

　シーサイドタウンの鬼崎家では、鬼崎未月が明日の準備をしていた。
「遠足、楽しみなの！　ぎじゅつかんって所はさいしんぎじゅつでいっぱいなの！　ゆめとロマンがつまってるんだよ！」
　金色のロングの髪を揺らす楽しそうな未月を、兄の鬼崎葉月は微笑ましく見守る。
「そうだな。けどな、未月。お兄ちゃんはお前と一緒にいけない……何故なら兄は遠足には年上のお兄さん、お姉さんのパンツを見る為にニャンドマークタワーや港に行かなくてはならないんだ、すまない」
「えっ、葉月にぃとは別行動なの？」
　楽しそうだった未月の表情がみるみる曇る。
「私……不安なの……あいらさんしかお友達いない……」
　葉月の発言内容には突っ込まない未月。兄の性癖にはかなり理解を示している優しい妹である。
「何、お前なら新しい友達がいっぱい出来るさ。いつまでもお兄ちゃんばかりに頼ってはいけないぞ」
　寂しいけどしかたないかな……と思ったた未月が、リュックにスコップとつちのこの里を入れようとした時。
「それはそれとして遠足にスコップは必要ないぞ。後、おやつはなめこの山だろ！」
　葉月のこの発言に固まった。
「スコップ持っていけないなんて！　それにおかしはつちのこの里一択なの！」
　未月の趣味は穴掘りである。小学二年生ながら、いや夢見る年頃だからこそなのか、寝子島に眠るという寝子島埋蔵金を探して今日も穴を掘る夢とロマンを求めるロマンチストなのだ。普段から自分専用のスコップ（折り畳み式）を肌身離さず持っている徹底ぶりだ。
　そして普段はとっても仲のいい兄妹でも、お菓子の好みは違ったようである。
「むー……葉月にぃなんて大きらい！」
「なんだって！？」
　良かれと思ったことで可愛い妹に嫌われ、葉月は肩を落とした。

　そのころ、星が丘では。
(ママ……パパ……)
　赤い髪で５年生にしては小柄な赤銅スフィアが、おじさんの家で心細い思いをしていた。
　内気で泣き虫なスフィアは、両親から離れ二学期から寝子小に転校してきた。
　本当なら遠足自体行きたくなかったけど。
　おじさんとおばさんが、遠足のためにスフィアのために選んでくれた可愛いリュックや水筒を見つめる。
（………楽しまないと、スフィア、悪い子になっちゃう）
　でもやっぱり外の世界、島の外に一人で行くなんて心細い、と涙を浮かべるスフィアだった。

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