遠足！　小学生、横浜へ｜リアクション

遠足！　小学生、横浜へ

◎しゅっぱーつ！

　遠足当日。自由な校風の寝子小は、バスも学年混合だった。

　朝の集合から、そしてバスの中でもスフィアは一人だった。
　窓際にちょこんと座り、他の子とは目をあわさずに窓の外を眺めている。
（あの子、一人なのかな）
　通路を挟んで隣の席にいた４年生の佐々木濫丸は、ぽつんと一人でいる女の子の様子が気になっていた。
　退屈そうな子がいたら、大好きななぞなぞを出して遊んでみたいな、と思っていたのだ。
　でもずっと窓の外を眺めているソフィアには声がかけにくい。
「初めて行くところばかりでドキドキしますね」
　隣の席の２年生、夢月姫は手に猫型のメモを持ち、何か書いている。
「そうだね。ねえ、なぞなぞやらない？」
「なぞなぞですか？　やりたいです」
　人懐っこく笑顔を向けてくれる姫に、濫丸はさっそくなぞなぞを出すことにした。
「それじゃいくよ！　目をつぶって飲む飲み物ってなーんだ？」
「えーっ？　むずかしい、何だろ？」
　首をひねる姫に、濫丸はしてやったりと笑顔を浮かべている。
「サイダーじゃないし、ぎゅうにゅうでもない？」
「ブッブー！　ふふ、答えは、水だよ！」
「えーっ？！　どうして？」
「みず、つまり見ないってことさ！」
「あっ、そうかあ！」
　驚いていた姫の表情が満面の笑顔に変わり、濫丸も笑顔になった。
「よし、じゃあ次の問題いくよー！」
　
　日帰りとは思えない大きなリュックを背負った５年生の野坂庵がバスに乗り込んだ。
　１年生の柚瀬玲音の隣の席につき、
「はっしーん！」
　男の子勝りな元気っ子の庵が、バスの発車と共に元気な声を上げた。
「ぱっきーもってきたの、焼き栗味とあげいも味、どっちがいい？」
　玲音が嬉しそうにリュックからお菓子を出す。
「うわあ、もらっていいの？　どっちか迷う～！　あ、交換しようよ」
　庵はパンパンになったリュックを楽しそうに開け、いっぱいのお菓子を見せる。
「えー、すごい！」
　たくさんのお菓子に玲音は目を丸くする。
「えへへ、バスに乗れるか不安だったけど、どうにかドアを通れたよ」
「すごい量だね。ボクも少し多めに持ってきたんだけど交換しない？　クッキーとかチョコとかあるよ」　
　通路を隔てた席にいた５年生の夕鈴翼が声をかけてきた。
　こちらはリュックは普通だが、小学生とは思えない胸が重そうだ。
「うん、いいよ！」
　女子同士の楽しいお菓子交換会が始まった。

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