星の降りしきる夜に｜リアクション

星の降りしきる夜に

〔銀河鉄道１１１系〕

【月のうさぎとおいしいお餅（一）】

「わー！　すげー！　本物のうさぎだ！　もふもふだ！　さ、触ってもいいかな？」
　双葉由貴くんはうさぎさんの近くまでやってくるなり、我を忘れておおはしゃぎをしていました。
　うさぎさんはそんな由貴くん顔を赤い目でじっと見つめると、とてとてと彼のもとに近づいてぴょんっと彼の胸に飛び込んできました。

「……日本語が通じてるの、か？」
　そんな由貴くんとうさぎさんの様子を長月蒼くんは少し不安げな表情で遠巻きに見つめています。
「蒼っ！　見てくれたか！　俺、月のうさぎを抱っこしちゃったぜ！」
　由貴くんはよっぽど嬉しいのかいつもの強がりやさんのポーズをすっかり忘れて無邪気な子供状態になっています。
（……まったく、のんきなもんだ）
　そんな由貴くんに、蒼くんはこっそりとため息をつきます。
　ですが、だんだんと蒼くんも、もふもふのうさぎさんを触ってみたくなり。
「よし。それなら僕も抱っこさせてもらおうかな」
　ゆっくりと優しく白いウサギさんの一人（一羽？）を抱きあげたのでした。

　その頃、そんな少年達とうさぎさんの様子を（戦いのために）遠くから窺っていた奈良橋博美さんは、
「……っ」
　はっと息を詰まらせて、背後を振り返りました。
　そこにいたのは白い道衣に赤いはちまきをしめた『二足歩行』のうさぎさん――の着ぐるみ。
（……そんなっ、今の今までまるで気配を感じなかった……）
　赤いグローブをした手をゆっくりと持ち上げて、うさぎさんはファイティングポーズをとります。
「……！」
　博美さんはハッと息を飲むと同時に構えを取りました。
　刹那、衝撃。
「……ッ」
　駿足で間合いを詰めてきたうさぎさんの左ストレートを、博美さんはすんでのところで構えた腕でガードしました。
（……あと一瞬反応が遅れていたら……負けていた……）
　じん、と痺れる腕に博美さんの格闘家の魂に火が点きます。
（面白いじゃないか。うさぎの跳躍と俺の『トンビの飛翔』。どっちが速いか、勝負だ！）
　直後、博美さんは防御から一転、トンビの飛翔でうさぎさんに急接近し、一撃必殺のカウンターを狙います――。