星の降りしきる夜に｜リアクション

星の降りしきる夜に

〔銀河鉄道１１１系〕

【星の海を往く者達（二）】

「……え、ここは？」
　双葉由貴くんは、ふと気がつくと銀河鉄道の車内に迷い込んでいました。
「……どうなってるんだ？」
　戸惑いながら車内を見まわしているとそこに見知った人の姿が。
「蒼！」
　由貴くんはパタパタと足音を立てて、その彼のもとへ走っていきます。

「……その声は、由貴？」
　聞き覚えのある少年の声に名前を呼ばれた気がして、長月蒼くんは驚いたようにそちらを振り返りました。
　彼もまた気がつけば銀河鉄道の中にいて、そこに知り合いの由貴くんがいたのです。
「……なんで、こんなところに？」
「……俺もよくわからない。たぶんろっこん……のせいだと思う」
　蒼くんの問いかけに、由貴くんも少し難しい顔をして答えます。
「……ろっこん？　ふうん、よくわからないけど綺麗な現象だね」
　そう言って、蒼くんは女の子のように長くストレートに伸ばした髪をかきあげて窓の外の景色を見つめました。

「……星がとてもきれい。でも、どうやって降りればいいんでしょう？」
　月守輝夜さんは窓ガラスの向こうで輝く星の群れをぼんやりと眺めて言いました。
　輝夜さんはこれまで運良く（？）あまり神魂の影響に巻き込まれない生活を送ってきていました。
　彼女もまた気がつけば銀河鉄道に乗っていたうちの一人なのですが、まだ他の人達のように不思議現象になれておらず少し心配な様子です。
（でも、みなさん、とっても落ち着いていらっしゃいますね……）
　ふぅとため息を吐き、輝夜さんは再び窓の外へ視線を戻すのでした。

　薄野一月さんは手帳に小説のネタをメモをしていた手をはたと止めて、銀河鉄道に乗っている自分に気がつきました。
「あら。これってもしかして噂の銀河鉄道？」
　彼は駆け出しの小説家で、どうやらバイト先から居候先の蕎麦屋「すすきの」に帰る途中で神魂の影響に巻き込まれたようです。
「これって絶対小説のネタになるわよね。せっかくなんだから思いっきり楽しまなくちゃ」
　状況を前向きに受け入れ、一月さんは再び手帳に今の状況をメモし始めるのでした。

　雨垂ミゾレさんは実家に向かう電車の中でついウトウトと居眠りをしてしまっていました。
　彼は御両親に『たまには顔を見せろ』と言われて乗り込んだ実家の方へ向かう電車の中で神魂の影響に呑み込まれました。
　よほど疲れているのか、ミゾレさんはまだ目を覚ます様子はありません。

　高坂皐くんは動じませんでした。
「うわあ。景色超綺麗。星の海？　ああ、うんうん。まさにそんな感じ」
　同じ車両にいる誰かがそんなふうに表現するのを聞いて納得という感じで頷きます。
「ところで、この電車ってどこ向かうんだっけ？」
　皐くんが呟きますと、ちょうどそれに答えるようにアナウンスの声が響きます。

『まもなく～、月～。月～。お降りの方は車掌まで『ビビッ』と念を送ってお知らせください』

「……ビビッ？」
　不思議そうに首を傾げながら、皐くんはせっかくだからと月へ降りるためドアの方へと歩き始めるのでした。

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