ののこがきゃはあ～と笑ったら｜リアクション

ののこがきゃはあ～と笑ったら

【店先にて】

＜インターネットカフェ【眠り舎】にて＞
「ふああ……」
　店頭で大あくびする日暮ねむるは暇を持て余していた。
「そういえば」
　自分に宿る不思議な力についてふと考える。
（額を触ると眠らせられる僕の力……何度か実践で使ってみたけど）
　まだまだ応用の仕方があるのではないか。前々から感じていた。退屈しのぎに、この力について考察してみようと決める。
（例えばこうしてみたりとか）
　手を額の前にかざして意識を集中させる。
「うーんだめか」
　直接触れなければ効果は発動しないようだ。
「やっぱりそううまくはいかないもんだなんだなあ」
　意識を持続させながら、諦め気味に首を揉んだそのとき。
「ふああ」
　ひと際大きなあくびが出た。
（あれ……さっきよりも眠たくなったぞ）
　手の平を凝視する。
（もしかして……額以外でも効果はあるのか？）
　自分の体の色々な箇所で試してみる。
（効果は頭から離れるほど弱まるみたいだけど！）
　どこかに触れながら意識すれば相手を眠たくさせることができる。
（これは収穫大だ）
　ねむるのろっこん「In to the Sleep　Act2」が開拓された。

＜Magique Raisinにて＞
　店主、聖籠あゆかは店内清掃に没頭している。
「ふんふんふ〜ん♪」
　アンティークやお菓子細工に見守られながら、あゆかは裸足でご機嫌に店内を行ったり来たり。
　一見、それは掃除とは思えない。あゆかは、人に見られていないところでは、ろっこん「Exclusion」を使って、置物を思い通りのところへ移動させたり、落ちているゴミをくずかごへ飛ばしていた。
　彼女の中でナニカが変わったのだが、掃除に夢中であゆか自身は気づいていない。
「よぉし！」
　直接手を使ったわけではないが、掃除完了の合図に両手をパンパンと叩く。
「一応お店、開けてみる？」
　あゆかの店に客は滅多に来ない。開けようが開けまいがどちらでもよかった。

　が、店を開けると同時に高校生くらいの女の子が入ってきた。
「あら、いらっしゃいませ」
　珍しい客に少し驚いたが、すぐ笑顔に切り替えて対応する。

　女の子のお客が出て行くと、音楽を流し、カウンター奥の長椅子でくつろぎ始める。
「ふわぁ……眠くなってきたよ……」
　いつのまにか夢の中へ。そこでもろっこんで掃除するあゆかだった。

　Magique Raisinを出た花風冴来は、今買ったものをじっと見つめた。
（青薔薇の……指輪……）
　大した額の代物ではない。全ての人を虜にするような、そんな魔性じみた魅力もなかった。しかし冴来にとってこの青薔薇の紋様は、とても大事なものであると感じていた。
（私の中の力が変わった）
　そう感じたのは数時間前。気づけばナニカに引っ張られるようにして店へ入り、迷わずこの指輪を求めたのだ。
（自分の意思では制御できなかったもの。これがあると大丈夫な気がする）
　指にはめてそっと顔に引き寄せ、模様に口づけする。
（少し試してみるくらいなら）
　周りを見渡す。雑踏は冴来に目もくれず流れるように動き続けている。
（きっと罰は当たらないよね）
　一人に目星をつけて、駆け出す冴来。
（何をお願いしてみようかな）
　ろっこん「trap of a blue rose」。新しい力は冴来の行く先をさらに助けてくれるだろう。

＜浅葱眼鏡店にて＞
　旧市街にある小さな眼鏡屋。そこには接客は決していいとは言えないが、技術はピカイチの眼鏡士がいた。
（客足が途絶えたので……少し整頓でも）
　浅葱あやめ。眼鏡の並びを整え、汚れの付いたものは丁寧に拭き取る。
　あやめの手がカラーレンズグラスのコーナーで止まった。
（……これを拭くと……）
　あやめのろっこん「今宵の眼鏡は何色眼鏡」が発動する。お客が手に取ったら一大事だ。おちおち手入れもできない。
（……少し試してみるか）
　ちょうど日が暗くなってきた。眼鏡ケースからブラウン色の眼鏡を出すと、まずは普通にかけてみる。
（……普通の景色……）
　続いて拭いてからかける。
（やはり視界は明るい）
　どのくらい持続するのかしばしかけながら整頓を続けた。
「すいません、やってますか？」
「わはっ、すす、すみま、せ……営業、して、してますっ……」
　慌てて眼鏡を外し対応する。いつの間にか日はどっぷり沈み店内は真っ暗だ。
　もう一度かけてみるともう効果は切れていた。
（もっと訓練すれば長くなるのかな）
「これ、付けてみてもいいですか？」
「あ、ど、どうぞ……！」

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