【らっかみおろし】第１区間：山頂から麓へ｜リアクション

【らっかみおろし】第１区間：山頂から麓へ

　chapter.8　第2区間へ　

　九夜山の麓、第1区間のゴール近く。
　ここでは第2区間の走者たち、そして応援に来ていたギャラリーたちが集っていた。ランナーたちを今か今かと待ち構える彼らのところへ最初に姿を現したのは、三毛猫チームだった。
「お、すごい人だな」
「これだけ応援されてると、きりのんが鼻血出してまで頑張った甲斐がアルヨネー」
「もういいだろそこは！」
　正也と武道のやりとりを、煉が諫める。
「最後の最後まで気を抜くなよ」
「はーい、ワカッテルヨれんちゃーん」
　とは言ったものの、ちらりと後ろを振り返っても他のチームの姿は見当たらない。
　どうやら、自分たちが思っていたよりもかなり後続を引き離していたようだ。
　彼らは2位以下に圧倒的な差をつけて、そのままゴールラインを割った。

　それからいくらか時間が経ち、次に見えたのはさび猫チームだ。
　滝に打たれた朝陽は疲労困憊、股間のダメージがまだ癒えきっていない刀、そして満身創痍のふたりの分まで頑張り、牽引し続けてきたといきら3人は既に限界を超えようとしていた。
　そんなさび猫チームのすぐ後ろには、黒猫チームの姿。
「もうちょい、もうちょいだ……！」
　勘三郎が残りの力を振り絞る。ピーターにしても、体力はほとんど残っていなかった。
「最後まで、頑張らなきゃねえ」
「おっちゃん、ファイトだぜ！」
「あとちょっとだよ！」
　勘三郎だけじゃなく、若菜も籠の横を併走しながら励ましの言葉を贈る。疲れが溜まっているのは、彼らも同じである。
　あと少し。しかしそれ故に、そのあと少しが埋まらない。
　気力だけで足を前に動かすが、無情にも彼らの目の前でさび猫チームはゴールしてしまった。背中は見えていたのに、あと一歩及ばず黒猫チームは3位でのゴールとなった。
　だが、めげてる暇はない。彼らには、最後の役目……次の区間の走者に籠を受け渡すという大事な仕事が残っているのだ。
「このチームの人形、託すね！　頑張って！」
　ゴールラインを割った後、待ち構えていた第2区間の走者に若菜は籠と言葉を贈った。無事引き継ぎが終わった後、彼女はその場に倒れ込み、ピーターと勘三郎に告げた。
「ふたりとも、今日はありがとう」
　その顔は、無事最後まで走りきった満足感に溢れていた。

　さび猫チーム、黒猫チームのゴールからやや遅れて、虎猫チームが現れた。
　人工呼吸をその身に受けてしまった利平と昌也の様子はこれ以上ないくらいグロッキーだったが、佳奈がふたりを鼓舞することでどうにか生きながらえていた。
「ゴールが見えたよ、利平君！　昌也君！」
　そう告げる彼女の格好は、滝行をした時のままだった。つまり、スクール水着姿だ。濡れた水着の上から服を着ることを嫌がったためなのだが、男子ギャラリーにとってはありがたいことこの上なかった。
　それはもう、人形なんて触らなくても充分福を授かったと言えるくらいに。
　パンツじゃないし、恥ずかしくないよねと自分に言い聞かせる佳奈だったが、さすがにこうも視線の集中砲火を浴びては恥じらいの気持ちが出てくる。
　そんな彼女を、今度は逆に利平と昌也が励ました。
「佳奈ちゃん、コンブを体に貼り付ければ肌は隠せるかもしれないよ？」
「それはそれで恥ずかしいよっ！　ていうか、まだ持ってたの！？」
「伊藤、ファッションモンスターを目指すなら今だぞ」
「目指してないけど！？　いや確かに虎柄マントとか持ってきちゃったけど、アレはお母さんがつくったものだから！」
　ぎゃあぎゃあと騒ぎながら進む彼らは、いつの間にかフラフラだったことも忘れ、気がつけばゴールに着いていた。

　その何分か後、最後のランナー、白猫チームがやってくる。
　澪が完全に意識を失っているため、謡と戦乙女が籠を持って走っていた。ちなみに澪は人形と一緒に籠に乗せられているため、その重量はかなりのものになっている。
　一体ここに来るまでに、どんな壮絶な出来事があったのだろう。ギャラリーも、次の走者たちもそんなことを考えたが、彼らがその真実を語ることは決してないだろう。
　それは、澪のためにふたりが見せた優しさだったのかもしれない。彼が目を覚ましたその時、「あれは夢だったんだよ」と言ってあげられるように。
　ギャラリーの温かい拍手が、白猫チームを優しく迎え入れた。

　第1区間最終順位
　1位　三毛猫
　2位　さび猫
　3位　黒猫
　4位　虎猫　
　5位　白猫

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：萩栄一／小西秀昭／梅村象山
ファンレターはマスターページから！

萩栄一です。
今回のシナリオに参加していただき、ありがとうございました。

第1区間のシナリオを担当ということで、他のマスターさん方はどんなテイストで書いてくるのか、
それが分からないまま書かせていただきましたが、僕のパートだけ浮いていないことを願います。

真面目に競技に取り組むアクション、全力で笑いを取りにいくアクション、
様々なベクトルがあってとても楽しみながら書かせていただきました。
お互いの色があるからこそ、よりリアクションが面白くできたと思っています。

レースなので順位付けはさせてもらいましたが、
勝った負けたに固執するのではなく参加者全員でつくりあげた一体感をぜひお楽しみいただければと思います。

余談ですが、途中に出てくる外人救助部隊が喋っている言語は「ヨルバ語」という、
西アフリカに住む一部の人たちが使う言語だそうです。
別に何の思い入れも知識もないんですけど、とりあえず誰も理解できなさそうな言葉にしようと思いまして。
翻訳サイトを使用したため、もし多少文法の間違いなどがあっても、優しく見逃していただければ幸いです。

なお、アクションに対する意見などを、
個別コメントで何人かの方に送らせていただきました。

それでは、また次回のシナリオでお会いできることを楽しみにしています。
長文に付き合っていただき、ありがとうございました。

↑ページトップに戻る

【らっかみおろし】第１区間：山頂から麓へ

あとがき

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧